Adaptiveキーボードは「見えにくい機能を発見するため」
そして、新たな取り組みとして最大のポイントが「Adaptiveキーボード」の採用である。
Adaptiveキーボードは先にも触れたように、キーボードの最上位段にファンクションキーの代わりに採用されたタッチパネル式のキー。状況に応じて必要な機能へと自動的に切り替わるものだ。
クラウドへのワンタッチ接続機能などを持ったホーム・モード、ファンクションキーを配置したファンクション・モードのほか、Webブラウザ・モード、Web会議・モード、そして180度開いたときに使用するレイフラット・モードという5つのモードを用意。約40種類のワンタッチキー操作が可能になり、これによって直感的に操作が簡略化できるという。
例えばレイフラット・モードでは、ディスプレイを180度開き、人が机を挟み相対した使い方においての機能を表示。瞬時に、画面を反対側の人向けにワンタッチで切り替えることが可能だ。
レイフラット・モードは、従来もショートカットや複数の手順を踏むことで同様の操作ができた。だがその操作法はキーボード上に明示されているものではなく、知っている人だけが裏技のように利用していたに過ぎなかったという。
中尾氏は「Adaptiveキーボードなら、せっかく搭載しているのに気が付きにくかった機能がワンタッチで利用できる。こんな機能があったのかということに、Adaptiveキーボード上のアイコンから直感的に気がついてもらえる」と語る。
Web会議・モードでは、新しいThinkPad X1 Carbonに搭載したマイクの集向性を変えられるボタンを表示。自席で一人で話すときと、会議室で多くの人が参加して話す場合とで最適な方に切り替えられるが、これまではマニュアルを読み込まないとここまでの機能を搭載していることはなかなか理解されなかった。だがWeb会議・モードでは、表示されたアイコンから直感的にこの機能を理解できるようになる。
「実際に、社内の10人ほどでWeb会議をしてみたが、この集向性機能を使うと電話より聞き取りやすいという声があった。埋もれていたThinkPadならではの機能をもっと便利に活用してもらたい」と小柳氏は語り、「Adaptiveキーボードは、ノートPCに使い慣れた人以外にも幅広く使ってもらうための提案。Web会議や音声認識といったさまざまなアプリケーションが登場するなかで、それらをより簡単に、そして使い勝手の良い、新たなユーザーエクスペリエンスを提供できないかという考えから採用したもの」とする。
このように、搭載した機能を有効に利用してもらうための役割も、Adaptiveキーボードの隠れた要素だというわけだ。
Adaptiveキーボードは、アプリケーションとの連携が不可欠だ。ユーザーの利用シーンに合わせて最適なモードを表示することが特徴であり、これまでにはなかった能動的なキーボードともいえる。
例えばボリュームコントロールは多くのモードで利用できるが、その表示がないモードを使っていても、ボリュームコントロールが必要となるアプリケーションが起動した場合には、ボリュームコントロールを使えるモードに切り替わるなど、アプリケーションと連動した制御も行われている。
そして、Adaptiveキーボードには、実はこんな狙いもある。Windows 8では、キーボードの操作によりアプリケーションの起動を制限する機能が盛り込まれている。だが、簡単に利用するためには、キーボード操作でアプリを起動したいというニーズもある。こうしたニーズに対応するため、簡単に複数アプリケーションを起動させる方法として、タッチパネル式のAdaptiveキーボードが採用されたという経緯もあるようだ。