タブレット・ノートPC・デスクトップPCの「スリースタイル」

一方、オプションで用意される「ターボモード用拡張クレードル」を利用すれば、まるでデスクトップPCのようなスタイルで利用できるのもARROWS Tab QH77/Mの特徴だ。ARROWS Tab QH77/Mはタブレットを軸とした製品でありながらも、2-in-1 PCというカテゴリに分類されるが、タブレット、クラムシェルノートPC、デスクトップPCという3つのスタイルで利用できるという点では、3-in-1 PCという表現のほうが正しいかもしれない。実際、富士通社内では「スリースタイル」という表現を用いている。

オプションのターボモード用拡張クレードル

とはいえ、ARROWS Tab QH77/Mの基本姿勢は、まずはタブレットとしての性能にこだわっている。CPUにはIntel Core i5-4200U(1.6GHz/ターボ・ブースト時2.6GHz、グラフィックス内蔵)を採用、そして4GBのメモリ、約128GBのSSDを搭載している。狩野マネージャーは、「タブレットであるからには、閲覧することや、持ち運ぶことが用途の中心となる。それでいて、生産性を損なわないサイズはなにか。A4ファイルサイズとしたのも、持ち運ぶギリギリのサイズから導き出したもの」とする。

タブレット本体のサイズはW309.6×D199.3×H11.9mm。タブレット本体の重量も、開発当初から1kgを切ることを目指し、重量は約980gを実現した。さらに、バッテリ駆動時間についても、JEITA基準で約16時間を達成。「通常の使い方であれば、1日持ち歩いて利用できるだけのバッテリ寿命を実現している」とする。

こうしたタブレットとしての基本性能に加えて、クラムシェル型ノートPCとしての用途でも妥協はしていない。それを象徴するのが、スリムキーボードを搭載した際に厚さ20mmとするなど、Ultrabookの要件をクリアしている点だ。生産性の高いデバイスを、持ち運んで利用することを想定した際に、開発陣は当初からUltrabookの仕様が目標になると考えた。

スリムキーボードは約1.7mmのキーストローク

開発当初から想定していたのは、タブレット本体の厚みが約12mmであること。それを前提にUltrabookの基準である厚さ20mmのスペックに合わせるには、キーボード部は8mmに収めなくてはいけなかった。だが、スリムキーボードで構成するモジュールだけで約4mmの厚みになり、そこに1.7mmのキーストロークを確保するとなると、外装には2mm強の厚みしか残らない。しかも、タブレット側に重量がかかるため、「頭が重たい」状態でバランスよく利用できる環境を作る必要もある。

そこで材料やレイアウトなどの工夫により厚みを最小限に押さえながら、クラムシェル型としても安定したタッチ操作ができるように、スリムキーボードの後ろ側底面から固定部を引き出す構造を採用。155度の角度まで画面を開けるようにした。これによって、持ち運び時には20mmという薄さを実現。スリムキーボードを使用する際にも、小さなスペースや膝の上などに置いても倒れずに安定した形で利用できるようにしたのだ。

タブレット本体の仕様上の厚みは約11.9mmと薄型

スリムキーボードの後ろ側底面から固定部を引き出す構造で、タッチ操作にありがちな「頭が重たい」状態でも安定性を高めている

そして、もうひとつのこだわりが、デスクトップPCスタイルで利用するためのクレードルである。ターボモード用拡張クレードルという名称からもわかるように、インテルの「Configurable TDP」機能を使うことで、高パフォーマンスモードで利用できる。8Wから15Wまで変化するCPUの電力使用状況に対応するため、別途、ファンを搭載した熱設計機構を採用している。

富士通 パーソナルビジネス本部 クライアントプロダクト事業部 第二技術本部 多鹿隆寿シニアマネージャー

「Haswellは演算系に強いCPU。描画処理などが求められるパーソナルユースよりも、ビジネスユースのほうがターボモードの価値を感じてもらえるのではないか」(富士通 パーソナルビジネス本部 クライアントプロダクト事業部 第二技術本部 多鹿隆寿シニアマネージャー)としている。

また、クレードルやスリムキーボードでは着脱を簡単にするために、一度ボタンを押せば、片手で取り外しできる構造も採用している。これも細かいこだわりのひとつだ。

着脱用ボタンは、オプションのキーボード・ドッキングステーションにも採用されている