富士通が発売したUltrabook「ARROWS Tab QH77/M」は、2-in-1スタイルのPCだ。通常はタブレットとして利用しながら、付属のスリムキーボードを取り付けることでクラムシェル型のノートPCとして、また、オプションのターボモード用拡張クレードルとキーボードを組み合わせることで拡張性と高性能を実現したデスクトップPCとしても利用できる。
長年に渡り、タブレットデバイスで実績を持つ富士通がタブレット利用を主軸に据えて開発した2-in-1スタイルの新たな提案がARROWS Tab QH77/Mだ。そこには富士通ならではのこだわりが満載されている。ARROWS Tab QH77/Mは、どのような意図で生まれたのか。開発チームを取材した。
10年以上前から「タブレット」開発を継続
富士通がタブレットにおいて、長年の歴史を持つメーカーであることは意外と知られていないようだ。同社は、2002年にWindows XP Tablet PC Editionを搭載したStylistic ST4000を発売した。さらに、2003年には画面部分が回転してタブレットになるスイベル方式のノートPC「LIFEBOOK T3010」を製品化。それ以来、タブレットデバイスの開発を継続的に行ってきた。
富士通のタブレットは、アジア地域や北米市場でも実績を持つほか、日本においても生保業界で導入されるなど、ビジネス領域において高い評価を得てきた歴史がある。その富士通が、タブレットでありながらも、より生産性の高さを追求した2-in-1 PCとして投入したのが「ARROWS Tab QH77/M」だった。
「あえて言うならば、タブレットとしての利用が5割。残りの3割がクラムシェルノートPCとして、そして2割がデスクトップPCとしての利用を想定した製品」と、富士通 ユビキタスビジネス戦略本部タブレット事業推進プロジェクト室プロダクト部・狩野明弘マネージャーは、ARROWS Tab QH77/Mの想定する利用シーンを示す。
同じタイミングで発表された10.1型タブレット「ARROWS Tab QH55/M」では、8割がタブレット利用になると想定しているのに比べると、QH77/Mはタブレットでありながらも、生産性の高さが求められるPCとしての用途を追求した製品であることがわかるだろう。
ARROWS Tab QH77/Mは、12.5型フルHD(1,920×1,080)液晶を搭載したタブレットで、付属のスリムキーボードに取り付けるとクラムシェル型のノートPCとして利用できるのが特徴だ。スリムキーボードは付属したまま持ち運べ、そのデザインはまさにノートPCそのもの。
「いままでPCを使っていた人がタブレットを使うと、どうしても生産性を求める使い方において不満が出てくる。例えば、何かをちょっと入力したいという場合に、ソフトキーボードがタブレットの画面いっぱいに出てくると、それだけで生産性が損なわれ、タブレットの使い勝手に不満を持つ。ARROWS Tab QH77/Mでは、キーボードで文字を多く入力する人にとっても使えるタブレットを目指した」というわけだ。
その実現に不可欠だったのが、スリムキーボードだ。
Ultrabookでありながらキーボードの操作感にも徹底してこだわっている。スリムキーボードのキーピッチは約19mm、キーストロークは約1.7mm。一般的なUltrabookと比べても、キーストロークの深さは特筆できる。そして、厚みを持ったクラムシェル型ノートPCに比べても、遜色がない仕様だ。
「打鍵感のあるキーボードが必要だということは、最初から重視していた点。ARROWS Tab QH77/Mでは、タブレット側にすべての機能が搭載されていること、さらに、スリムキーボードはタブレット側から給電されるシンプルな構造とすることで、これだけのキーストロークを確保できた」というわけだ。
実は、開発当初には、スリムキーボード側にも電源を持たせることを検討したが、あえてタブレット側からの給電としたのは、タブレット本体側で十分な駆動時間を確保しているということも理由のひとつ。そして、スリムキーボードは本体とともに持ち運ぶという用途を想定しており、その際の重量増を避けるためのものでもあった。スリムキーボードを加えながら、約1.67kgの軽さを実現できたのも、その考え方が功を奏している。
とはいえ、さらに長時間駆動を求めるユーザーもいる。そのためにバッテリを内蔵したキーボード・ドッキングステーションもオプションで用意し、用途に応じて選択できるようにしている。後述するが、12.5型の画面サイズもPCユーザーからの移行を意識し、生産性の高さを維持するために必要な大きさとして採用したものだという。