――今作から、各キャラクターの私服姿が一新されました。このタイミングでの変更はどういった意図で行われたのでしょうか?
桂先生に「季節も春の設定ですし、同じ洋服を着たきりだとあまりにもアニメっぽいので、服を着替えさせてほしい」とお願いしたんです。
そうして桂先生からあがってきたデザインは、髪型などを含めてキャラクターデザインそのものにも変更が加えられていました (笑) 我々としては、桂先生が提案するキャラクターデザインを採用した方がより良くなる、という思いから、全面的なデザインの変更を行いました。桂先生の設定画のイメージにより一層近づけようとの考えから、瞳の大きさなども非常にリアルな方向にシフトしているんです。
――頭身や顔の作りが実際の人間に近い作りになっていますが、それは桂先生のデザインに寄せていった結果だったのですね。
作画のこともそうですが、話し合いの結果、総合的な意味で実写に近づける方向を取ることに決めました。この作品はTVシリーズまでは何だかんだ言ってもアニメ的なイメージではありました。そんな中で、今回から写実的なキャラクターデザインを採用したのは、決してTVシリーズを捨てるということではなく、そこにより成長を上乗せするような形で実現していきたいという意図があるためです。
以前は制服姿で髪の毛をおろしていたが、今回はワンピースにポニーテールという出で立ちとなったカリーナ(ブルーローズ) |
虎徹の娘・楓はTVシリーズでも一度デザイン変更があったため、実はヒーロー達よりも"着替え"の回数が多いキャラクター。『The Rising』でも新たな服を着て登場する |
ただ、キャラクターデザインを写実的にしていくと表情作りが難しくなり、微妙な顔の表情の変化で、意図したところと違う見え方になってしまうこともあり苦労しました。今回、TVシリーズに登場したのと同様の演技も出てくるわけなんですが、そこについても従来通りの表現ではなく、この方針に沿ったものに変更しています。
――なるほど。確かに予告編からは、ストレートなアニメ的表現というより、洋画に近いような印象を受けました。洋画のような表現を行うにあたり、作画の負担に増減はあったのでしょうか?
苦労も多かったですが、高いクオリティでそれを実現する方法論を作り上げなげら、完成に近づいていった、という状況です。
――そこまでして「より実写映画に近いアニメ」という方向性を打ち出していったのには、どういった思惑があったのでしょうか?
まず、(TVシリーズではなく)映画であるということ。そして、これまでのファンの方々に加え、もっと多くの方に観ていただきたいという想いと、もっとグローバルなところを狙っていきたいということから、実写に寄せた作画を行っていきました。
――グローバルというと、海外展開も視野に入れているということでしょうか?
海外展開もそうですし、国内でもより多くの人が入り込めるような要素も入れていったほうがいいのでは、ということですね。
――そういった"進化"のための要素は、作画の変更以外に何があるのでしょうか?
アクションが多くなっているところです。タイバニって、ヒーロー物ですが必ずしもアクションがメインではないんですよね。
――はい、ジャンルこそヒーロー物ではありますが、群像劇の色合いが強いですよね。
タイバニは戦闘を見せるのではなく、心理を見せる作品なんです。『The Beginning』もその部分にはこだわっていまして、最後に派手な戦闘をもってくるのではなく、心理で盛り上げるという方向にしているんです。なので、今回の『The Rising』は、これまでのタイバニとはちょっと違ってきているのですが、劇場作品であることを強く意識して、そういう要素も取り入れたというところです。
――アクションが多くなり、実写映画に近づけていると聞くとハリウッド映画を連想するのですが、ハリウッド風の演出も取り入れたのでしょうか?
はい、そういうことですね。映画としての完成度は高くなったと思います。
でも、より多くの人が入り込める要素とは言いながらも、既存のファンを置き去りにすることはしたくないので、制作中は新しい要素を入れつつも、これまでのファンを裏切らない形にするためのバランスを取るのがとても大変でした。やっぱり、ファンは一番大事にしたいですから。
――最後に、この記事を読んでいる読者に一言お願いします。
これまでのタイバニと異なると感じる部分もあり、先ほど申し上げたような多くの方々の想いが詰まったものになっていますが、今まで応援してくださったファンの方を何より大切にしようと心がけて制作してきた作品です。多くの方に楽しんでいただけたらと思っております。
――ありがとうございました。
『劇場版 TIGER & BUNNY The Rising』
■作品紹介
一度引退を決意したものの、ヒーローに復帰したワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹とバーナビー・ブルックスJr.。"マーベリック事件"によりオーナー不在となったアポロンメディアは、新たにカリスマ実業家のマーク・シュナイダーを新オーナーに迎え、会社の立て直しを図る。その一環として、シュナイダーはバーナビーを1部リーグへ復帰させるが、その相棒は彼がスカウトした新ヒーロー・ゴールデンライアンだった。バーナビーとゴールデンライアンの新コンビの活躍を見た虎徹は2部リーグでの自身の活躍を誓うが、彼には厳しい現実が待っていた。時を同じくして、シュテルンビルトでは街に古くから伝わる女神の"影"があらわれたことをきっかけに、奇妙な事件が起こりはじめていた。果たしてこの事件の真の"目的"とは――謎に翻弄されるヒーローたちにさらなる危機が襲いかかる。
■CAST・STAFF
<CAST>
平田広明 / 森田成一 / 中村悠一 ほか
<STAFF>
企画・原作:サンライズ / 監督:米たにヨシトモ / 脚本・ストーリーディレクター:西田征史 / キャラクター原案・ヒーローデザイン:桂正和 / 配給:松竹/ティ・ジョイ
(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS