――ところで、いわゆる若者のテレビ離れについて、また昨今のテレビバラエティーを取り囲む状況についてはどう思ってますか?
視聴者構成比がある程度、世帯視聴率の数字に跳ね返っているから年配向けの番組が増えるのはしょうがないですけど、やりようはあると思うんですよ。その中でも僕は比較的、若い人たちが見てくれている番組を作っていると思うし、そのためにいろいろなジャンルに"タグ"を置くというか、見てもらうきっかけになるためのコラボをたくさんしているつもりではあります。僕自身、若い人が好きなニコニコ(動画)もボカロ(ボーカロイド)も普通に面白いと思いますし。それらをテレビの中でうまく消化して、いい関係を築いていくことは全然あきらめてませんし、これからもやり続けたいとは思いますね。
――テレビの可能性はまだまだある、ということでしょうか。
「可能性」と大きく構えるとまだ分かりませんが、僕自身がやりたいことはまだまだたくさんあります。特に自分より年下の人たちに「これ面白くない?」と言いたいんですよ。ですから、若い層とは常に向き合っていきたいです。
――その感覚はプライベートでも変わりませんか?
そうですね。僕、普通にライブとか1人で行きますから。パスピエとか赤い公園が出たての頃のライブに行ったら、おっさんは僕しかいなかったこともあります(笑)。今でもライブには時間が許す限り足を運んでるし、とりあえず「面白いこと」が立ち上がっている現場には出来るだけ行きたいんですよ。ナカゴーっていう劇団が好きで、こないだチケット取って見に行ったら、市民会館の四階みたいな狭い部屋で体育座りして見ました(笑)。岩井秀人さんもそうやって見つけましたし、だからやめないと思いますよ。
――テレビバラエティーを作る上で、アンテナを張り続けることはやはり必要でしょうか。
おぎやはぎのラジオ番組でも答えたことがあるんですが、やっぱりテレビが好きでバラエティー番組を作りたい気持ちがあるのは当然とした上で、それ以外で好きなジャンルがあるにこしたことはないと思うんです。それがあるのとないのでは全然違いますし。僕はポップカルチャーやサブカルチャーが好きだけど、たとえばプロレスが好きでそのエッセンスがバラエティーに入る人もいるでしょうし。大事なのは、それを常にアップデートしておくこと。下積みを重ねていざディレクターになって番組を作るチャンスが来ても、学生時代の知識で作ると絶妙にダサくなるんですよ、これが。「あ、こいつ、勉強してねえな」と。
――若い層を相手にする場合は、特に意識しないといけないことですか?
というよりも、単純に僕が現役でソフトの受け手である自覚がある、ということです。毎週テレビを見るのも好きですし、漫画も音楽も好きですし。テレビの中で「お笑い」は今、どちらかというとその場で生まれるものというか、即興の人間関係で生まれるものが多くて、かつ笑いも取りやすい。それはそれで僕は大好きなんですけど、それとは違って、何年後かに見てもやっぱり面白いのが"作り込んだ笑い"だと思うので、そこを目指したいですね。見るきっかけはアドリブでもいいですけど、この『キス我慢選手権 THE MOVIE』は何年か後に見てもきっと笑えるし、決して瞬間の面白さではないと思うんですよ。
――話を聞いていると、佐久間さんはサラっとしているようで実は良い意味で執念深い人なのでは、という印象を持ちました。
言われるとそうかもしれないですね。漫画も音楽もダメだった自分が今、テレビでちょっとでもモノづくりに携わっていられるのは、いわば精神的な挫折の果てにやっと流れ着いた夢のような状況なんです。やっと出来た彼女みたいなものなので、こうなったら出来る限り添い遂げたいと思います(笑)。