劇団ひとり、おぎやはぎ、バナナマンらが出演するテレビ東京の深夜番組『ゴッドタン』の人気企画「キス我慢選手権」から生まれ、今年6月に劇場公開された劇団ひとり主演の映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』。そのBlu-rayとDVDがリリースされた。同番組の演出を担当し、今回の作品の監督・脚本を務めたテレビ東京・佐久間宣行氏に話を聞いた。

佐久間宣行(さくま のぶゆき)
1975年11月23日生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、1999年にテレビ東京入社。『大人のコンソメ』、『ウレロ☆未確認少女』で総合演出を務める。現在は、『ゴッドタン』(演出・プロデューサー)、『ピラメキーノ』(プロデューサー)を担当している。

――劇場公開からしばらく経ちましたが、今、佐久間さんが今回の作品について思っていることは何でしょうか。

一番良かったなと思うことは、映画であることにかっこつけたり酔ったりせず、「キス我慢選手権」という企画のキモを忘れずにそのまんまやれたことですね。改めて「何でこれ面白いんだろう」と思ったら、やっぱり劇団ひとりのアドリブとウォッチングルームでゲラゲラ笑っている人たちの存在なんですよ。そこを無くさずにスケールアップという形でそのまま映画化出来たのが、今思えば良かったなと思います。

――自分たちが面白がってきた大事なポイントをそのままブレずに提供出来たと。

映画化の際「ウォッチングルームは無くてもいいんじゃないか」という意見もありましたけど、そうするとこの企画の何が面白いのか忘れてしまう気がして。悩んだんですけど、そのままやることにしたんです。でも、結果的にそうすることで自分が大好きな映画というものをバカにしてることにはなってないし、自分が今までやってきたお笑いをバカにしてることにもなってないと思いますね。

――ある種、ドキュメンタリーとも言えるリアリティーがこの作品の最大の面白さだと思います。佐久間さんの中ではこの作品をどのようにとらえていますか?

1つはバラエティー番組のパブリック・ビューイングという意味での"実験"というか。バラエティー番組のような面白くて笑えるモノを大勢の人と一緒に見て一斉に大声で笑う、という快感って実はなかなかないし、それを実現出来たのはすごく良かったです。もう一つは、自分が曲がりなりにもやってきた"笑い"の中で関わっている要素……ストーリーだったりコントだったり音楽だったり、そういうサブカルチャーの中で自分が好きな要素を全部詰め込んで、くだらないんだけどグッとくるようなモノに仕上げようと思って作りましたが、ちょっとは達成出来たかなと。

――その意味では今、満足感をひしひしと感じてますか?

これを見た人ほぼ全員「劇団ひとりすげえな」と言うと思うんですよ。それは根っこの部分で伝えたいことの一つですね。司会者をやっても何をやってもいいけど、彼は"天才芸人"なんだよ、と全国の人に言いたかったので、それが出来たのがなにより嬉しかったです。たぶん、見てくれた人のすべてが「何なんだろう、この人」と思っていると思いますけど(笑)。