AT&TはT-MobileのUn-carrier戦略を強く意識しており、今年5月には「Aio Wireless」という独自のプリペイド専業ブランドを立ち上げ、ユーザーの裾野を広げT-Mobileに流れ始めていたユーザーを取り込む動きを見せている。なおT-Mobileは1月8日に米ネバダ州ラスベガスで開催されるCESで「Un-Carrier 4.0」に関するプレスイベントを実施する予定で、ここでもまたユニークな施策が発表されることになるとみられる。

そしてSprintやT-Mobileが存在感を増すのと並行して、5位以下のキャリアが次々と大手に吸収され、業界大再編が進んだのも2013年の特徴だ。もともとSprintは他社に回線を貸し出すホールセールのサービスで最大手であり、米国でサービスを展開するMVNOの多くはSprintのネットワークを利用している。プリペイド事業者として米国進出したVirgin Mobileは後にSprint自身に吸収され、Sprintが親会社として、これらMVNO子会社をプリペイド専業ブランドとして全米展開するなど、ブランド使い分け戦略の祖ともいる存在になっていた。現在、携帯電話普及率が100%に達している米国ではこれ以上大きくユーザー数上積みを望むのは難しく、遠からず戦略見直しが必要になることは業界内部でも強く言われている

これを打開する方法は大きく2つあり、1つはAT&T CEOがいうように端末の割り引き販売を止めて単位顧客あたりの収益性を向上させること、そして2つめが新たな顧客層への訴求だ。プリペイド戦略強化はその一環であり、T-Mobileは業界5位でプリペイド事業者最大手のMetroPCSとの合併を、AT&Tは同じくプリペイド専業キャリアであるLeap Wireless (Cricket Wireless)を吸収した。現在5位のUS Cellularを除けば、中堅キャリアはほぼ大手に収れんされた形となり、米国の携帯電話市場は「突出した2社に、それに続く大手2社、それ以外」という勢力図になった。

そしていま噂されるのが「SprintとT-Mobileの合併」だ。Wall Street Journalによって報じられたこのニュースは、まもなく実行に移される可能性が高いという情報も出ている。Sprint (もちろんそのバックにはソフトバンク)の賭けを危険視する意見もあるが、これがもし実現するならばVerizon WirelessとAT&Tという巨大な2社にほぼ匹敵するレベルの顧客ユーザーを持つ第3のキャリアが誕生するわけで、米国携帯電話業界は「BIG 3」の時代へと突入することになる。「スマートフォン普及率が高い」「ハイエンド端末拡大の限界」「プリペイドによるユーザー層拡大の試み」と、米国はこれから世界中で起こるであろう携帯電話市場の諸問題を先取りしており、その意味で一連の業界再編とキャリアらの打開策に多くの注目が集まるところになる。今後2~3年継続的にウォッチしていると、いろいろ面白いものが見られるだろう。