結果として、ClearwireならびにSprintの買収価格は引き上がることになり、銀行団の支援や為替予約等の措置もあったものの、ソフトバンクに一定の負担としてのしかかることになった。最終的にソフトバンクによる買収は2013年6月に株主総会で承認され、翌7月には米連邦通信委員会(FCC)の承認も取り付け、7月10日での買収完了を宣言するに至った。なお、買収で争ったDishとSprintはその後、LTEを使ったサービス拡大で提携を結んでいる。
T-Mobileの攻勢と業界大規模再編の幕開け
Sprintとともに米国での業界再編の目玉となっているのがT-Mobileだ。2011年にAT&TがT-Mobileの買収を断念して以降、同社は限られた投資リソースもあり大手2社との差は開く一方だった。もともと同社はSidekickやT-Mobile G1 (別名「HTC Dream」で世界初のAndroid端末)といったユニークな製品を市場に次々投入してコアユーザーの人気を集めていたキャリアだったが、そうした魅力も2007年にAT&T独占で登場したiPhoneや、次々とバリエーションの登場するAndroid端末の前ではあまり強みを活かせなかった。
その転機の1つとなるのが2013年3月に米ニューヨーク市で開催されたイベントで発表された「Un-carrier」戦略で、これまでの携帯キャリアで当たり前だった「○年契約縛り」をなくしてユーザーの自由度を上げ、さらにLTEサービス開始やiPhone投入など、次々と新施策を打ち出してこれまで横ばいだったユーザー数増加カーブを上昇へと反転させた。これまで携帯キャリアは「端末を安価にばら撒いて月々の通話料から徐々に回収する」というモデルで成り立っており、これを「端末は少々高価だが手頃な通信料金で解約も自由」というプリペイド方式を前面に押し出す形で戦略の主軸に据えたことは、業界全体から大きな驚きを持って迎えられた。同社は定期的に「Un-carrier」戦略のアップデートを行っており、つい先日には
海外ローミングでの安価なデータ通信定額サービス (その代わり通信速度はEDGEクラス)、さらに数日前にはT-Mobile回線でFacebookサービスへのアクセスが無料で利用可能になるサービスが発表されるなど、他社と比較してもユニークな試みで注目を集めるようになった。