――北海道でのロケは極寒との戦いだったのでは?

李監督「最初は半袖だったんですよ。9月の下旬から撮影がはじまったので。その頃は予想に反して北海道も暖かかったんですけど、11月に入ると雪が降り出して……。最後、忽那さんが泣くシーンは、体感温度がマイナス15度くらいで、カメラに向かって走れといっても、走れない。寒いと言うより痛いんですよ。あれはもう痛くて泣いていたんじゃないかって思うぐらい(笑)。役者さんは本当に大変だったと思います」

――殺陣のシーンもかなり大変だったのではないでしょうか?

李監督「撮影そのものよりも、ああいうアクションにすると決めるまでがちょっと大変でした。何が正解なのか? そこへ至るまでに、だいぶ時間がかかりました。ただ派手で、カッコいいだけのアクションじゃダメなんですよ。やっているほうにも痛みがある、こういう生き方しかできない男のアクション。それを感じさせるには、どういう動きが必要で、どういう間合いで感情が見え隠れさせればいいか。そこに行き着くまではいろいろ悩みました」

――原作はガンアクションですが、刀を使うことでだいぶ印象が変わっている気がします

李監督「銃だと自分でもできそうじゃないですか。やらないですけど(笑)。刀の場合は、完全に殺意なんですよ。並みの人間には絶対に出来ない。自分の中で何かを越えるのか、あるいは捨てるのか。内面が変わらないと出来ない気がする。そういう意味で、刀を使うと、人を傷つけることのハードルがすごく高くなる。ハードルが高くなるということは、返ってくるもの、引き摺るもの、そして背負わされるものがすごく大きくなる」

――そこが今回のリメイクにおける大きな注目点にもなっているのではないでしょうか?

李監督「そういうことの積み重ねによって、最後に映る主人公の姿が、オリジナルと決定的に違ってきたんだと思っています」

――今回、渡辺さんが演じた十兵衛はヒーローなのでしょうか? それとも、ああいう生き方しかできない、あくまでもひとりの人間なのでしょうか?

李監督「基本的なベースはやっぱり『業』なんですよ。そういう生き方しかできない。でも、どこかに、それは理想かもしれないけれど、ヒロイズムをほんの一瞬でも求めているとすれば、『女郎とアイヌのことは書くな』というところ。そこに、何かそういうニオイを感じ取りたかったのではないかと思います」

――それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします

李監督「僕がオリジナルを観たときに感じたのと同じで、今現在と、5年くらい経って観直すのとではまったく印象が変わる作品だと思います。年を追うことで見え方が変わるタイプの映画だと思っていますので、何度も見返していただけると嬉しいです。よろしくお願いします」

――ありがとうございました


『許されざる者』のBlu-ray/DVDは2013年12月25日の発売で、価格はBlu-ray版が4,980円で、DVD版が3,980円。なお、2014年2月5日には、「Blu-ray&DVDセット豪華版(3枚組)」の発売も予定されているので、こちらもチェックしておきたい。