2013年9月に公開された話題作『許されざる者』。1992年に公開されたクリント・イーストウッド監督・主演の西部劇を、李相日監督の手によってリメイクされた本作は、大作時代劇として大きな注目を集めた。

本作の時代背景は、オリジナル作と同時期となる明治時代初期。舞台を北海道に移してはいるものの、登場人物の設定などはオリジナルをほぼ踏襲しており、原作でクリント・イーストウッドが演じた主人公を渡辺謙が演じたほか、佐藤浩市、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子など、豪華キャスト陣が新たなる『許されざる者』を支えた。

主演・渡辺が扮するのは、愛する女性と出会って以降、刀を封印していた幕府軍残党・釜田十兵衛役。ある日、かつての仲間・馬場金吾(柄本明)から、顔を切りつけられた女郎なつめ(忽那汐里)の敵討ちの話を持ちかけられ、やむを得ず再び戦いの場に身を投じていく……。

そこで今回、『許されざる者』が2013年12月25日、Blu-ray/DVDとなってリリースされるのを前に、李監督に作品の魅力などをあらためて語ってもらった。

李相日監督が語る『許されざる者』の魅力

――2013年9月に公開された『許されざる者』ですが、公開されてからの反応はいかがでしたか?

李相日監督

李相日監督「基本的には良いことしか耳に入ってこないですけど、それと同じくらい悪いことも言われてるんでしょうね(笑)。リメイク作品って、あまり上手く行かないことが多いじゃないですか。そういう意味では、リメイクして失敗した、みたいなことはあまり言われていないみたいなので安心しています」

――監督ご自身の手応えは?

李監督「リメイクとしての出来はさておき、この映画でやろうとしたことはちゃんと伝わったのではないかなと思っています」

――本作はキャスティングも豪華な顔ぶれになっています

李監督「キャリアがある方が多いですが、ひとつだけはっきりしているのは、キャリアの上に胡坐をかいているような人は一人もいないということです。あれだけのキャリアをお持ちでいながら、まだ何か新しいチャレンジをしたい。そんな、俳優としての欲みたいなものをきちんと持っている方たちでした。僕のほうが一回り以上も年下ですけど、キチンと向き合えたのは、お互いの映画に対する欲が反応しあえたからだと思います」

――今回のキャスティングはまず渡辺さんから決まったそうですが

李監督「この企画をワーナー・ブラザーズさんに提案するのとほぼ同時に、謙さんサイドにもお話をしていました。それこそ台本ができる前から、『許されざる者』のリメイクで、舞台は北海道で、明治維新を潜り抜けた男です、みたいな概略をお話させてもらって、その時点で引き受けてもらっていました」

――渡辺さんにアプローチした経緯は?

李監督「理由は特にないんですけど、これはもう明確なんですよ。自分の中で迷いもなければ、疑問もない。なぜと聞かれる理由がわからないくらい迷いがなかったです。やはりオリジナルがクリント・イーストウッドですから、どうしても比較される宿命にある。イーストウッドにまったく遜色ないぐらい、圧倒できるものがある方と言えば、もう悩む余地なんかないんじゃないかと思います」