現在、携帯キャリア決済やPayPal、銀行振り込み等の他の支払い手段は提示されていないようで、クレジットカードを所持していないユーザーや、カード情報を提示したくないユーザーにはこの点がマイナスだろう。手軽に利用でき、ユーザー層を広げる意味ではぜひキャリア決済等のサポートをしてほしいところだ。
提供開始が遅れる非接触電子マネーサービス
今回12月18日開始となったモバイルCashbeeだが、もともと発表されたのが昨年2012年11月のNTTドコモ冬・春モデルの製品発表会の席で、提供開始時期も今年2013年第2四半期ごろを予定していた。ところが第3四半期へと延期され、ついに半年遅れの12月中旬のタイミングでのローンチとなった。だが前述のようにサービスの実装状況は半分程度で、読み取りタイミングのシビアな交通系カードの実装は遅れている。2014年春での提供としているが、これまでの経緯を考えればさらに先となる可能性が非常に高い。国内サービスとしてUSIMに対応した初の決済サービスだっただけに、検証の難しさを感じさせるものとなった。
Cashbeeと同じタイミングで大々的に発表された「Docomo iD~MasterCard PayPass」の連携サービスも提供が遅れている。もともとはCashbee同様に2013年前半を予定していたものが、後に2013年内となり、最終的に2014年2月提供開始とのプレスリリースが発表された。これはiDのユーザー情報を使って非接触でのクレジットカード決済を行うサービスで、国内ではFeliCaを使ったiD決済、海外や国内でのType A/B型通信ターミナルではPayPassへと通信方式をスイッチする仕組みになっており、iDのアカウントとカード情報さえあれば国内外を問わず買い物が可能という非常に便利なものだ。ただしドコモの説明によれば、そのぶんだけ検証の手間がかかり、当初のスケジュールが達成できない状況になったという。
実際、PayPass対応決済ターミナルは世界中にすでに多数設置されているため、それらをすべて包含するのはなかなか難しいようだ。クローズドループで比較的難易度の低いモバイルCashbeeでさえ手間取っていることを考えれば、iD~PayPass連携の2月スタートもやや厳しい状況にあると予想される。これは三井住友との提携で発表された「Visa payWave」アプリサービスについてもいえ、当初9月提供だったものが、最終的に原稿執筆時点まで提供がずれ込んでいる。
これは日本固有の現象ではなく、世界的にみても電子マネー系サービスが順調に立ち上がったという話はあまり聞かない。著名な例は英ロンドンで、2012年夏のロンドン五輪開催後にインフラを一般開放すると宣言していたものの、最終的にこの計画は大幅に遅れている。一方でソフトローンチだった米ISISは1年あまりのパイロット期間を終え、先月11月に全米ローンチを実現した。このあたりは、モバイルアプリにスマートカードの強固なセキュリティ機能を搭載することの難しさを浮き彫りにしている。
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