11月6日~9日、東京ビッグサイトで「2013 国際ロボット展(iREX2013)」が開催された。同展は日本ロボット工業会/日刊工業新聞社の主催で2年に一度開催される業界最大の展示会で、東ホール1~3をフルに使った会場は多彩なロボットたちで埋め尽くされた。
会場は、産業用ロボットゾーン(IR)と、サービスロボットゾーン(SR)とに分けられていたが、大部分はIRの方で、SRの方も大学や研究機関の成果発表や、ロボット・ビジネスの市場確立を目指すベンチャーの提案などが中心。基本的にはスーツのビジネスマンが行き交うおカタいムードの展示会ではあるのだが、そこは空想と現実の交錯によって発展してきたロボットの世界。ホビー系のメーカーによる、マンガやアニメ等の影響の色濃い……要はヲタクチックな出展もちらほら?
業界の動向を追うガチな記事は、専門メディア等にお任せするとしよう。ここでは、フィクションでもリアルでも「ロボット、大好き!」というファンの目線で、注目の出展をレポートしてみたい。
「可変」は男のロマン! 驚異の三段変形飛行ロボ「HVF-04X」
さて、早速ではあるが断言してしまおう。"ロボット = エンターテインメント"という視点で捉えるならば、今回のロボット展の目玉は、間違いなく姫路ソフトワークスの飛行モード搭載ロボットキット「HVF-04X」であった! そこでまずはこのロボットを大フィーチャーしてご紹介したい。
ロボットモード背面。翼は飛行機モードと変わらず広げたままなので横幅は相当あるが、二足歩行時も両肩のファンを回して安定を図るとか |
「HVF-04X」が掲載されたカタログとパンフレット。飛行デモムービーも流されていた |
「HVF-04X」は全身に18個のサーボモーターを搭載したホピー系の二足歩行ロボット。それだけなら今や珍しくないが、なんと、ヒト型のロボットモードからホバリングモードを経て飛行機モードへと、自動三段変形を実現! 某アニメの可変戦闘機を想起せずにはいられないその姿は、まさに30年越しの夢……超時空的な男のロマンを現実のものにした逸品と言えよう。
今夏のおもちゃショーではタカラトミーが「トランスフォーマー」の可変試作モデルを発表。ロボット形態では二足歩行、ビークル形態では車輪走行を実現していたが、この「HVF-04X」は、飛行機モードとホバリングモードで飛行を実現! 両肩に装備されたダクテッドファンで空中に浮かび、一定の高度を保っての移動が可能。しかも、ホバリングしたまま両モード間の変形もこなすと言う。
通常なら飛行時はジャイロセンサを使用して姿勢を制御するところだが、飛行モードでの底面3点に配置されたイメージセンサで画像解析を行い、床面との距離を一定に保つことでホバリングを実現。極端な高低差があっても対応でき、たとえばテーブル上をホバリングしていて飛び出した場合は、床面まで高度を下げてホバリングを続けられるそうだ。
残念ながら、ロボット展事務局からのお達しにより会場での飛行デモはNGで、実際にホバリングする様子は見られなかったのだが、YouTubeに飛行中の動画が公開されているのでぜひチェックしてみて欲しい。
姫路ソフトワークスのブースで流されていた「HVF-04X」水平浮上テスト動画 |
そして、うれしいことにこの「HVF-04X」、単なる参考出品ではなく来年、年明け早々にも発売を予定! 今回展示されたモデルで基本的な機構はすでに完成の域に達しており、後は細部の調整とブラッシュアップのみという状況だとか。
実は姫路ソフトワークスは、2011年から刊行されたデアゴスティーニの分冊キット『週刊ロボゼロ』で組み上がる「ROBOXERO」の開発メーカー。同誌は昨年末に刊行終了となったが、デアゴスティーニのサイトでは現在、ROBOXEROを可変ロボに進化させる追加オプションパーツ「タンクモード変形ユニット」が申込受付中だ。
オプションパーツの「タンクモード変形ユニット」を組み込んだ「ROBOXERO-T」。ちなみに、右に寝転がっているのはベースとなった「JO-ZERO」だ。どちらも頭部デザインは同じで『プラレス3四郎』の神矢みのる先生が手がけた |
申込締切は12月16日だが、購入者の中から抽選で1名になんと「HVF-04X」をプレゼント! という特別企画を実施。そのためもあって、急ピッチで開発を進めているのだそうだ。
飛行には細かな調整が必要なため、「HVF-04X」はキット形式でなく半完成品、受注生産という形で販売。価格は30万円台前半を目指すとのこと。決して安くはないが、従来のロボットキットでも10~20万円台は普通。さらに変形・飛行の機能がプラスされ、しかも完成品となれば、むしろ破格と言ってよいのでは? とにかく発売を大いに期待したい!
IRゾーンの中にアニメチックなロボたちが並び、異空間を現出!?
ちなみに姫路ソフトワークスの展示は、エンタメ寄りのブースも点在したSRゾーンではなく、IRゾーンのORiN協議会ブース内に位置していた。そのため、周囲は実用的な産業用ロボット関連の展示ばかり。そんな中、「HVF-04X」や「ROBOXERO-T」以外にも、二足歩行ネコ型ロボット「ねこだむ30号」、ひょうきんなデザインの「ATR-PONKO-X」など、アニメチックなデザインのロボットたちが並んだ一角は明らかに異空間と化しており、逆に注目を集めていた。
展示コーナーの中心はORiNの標準通信プロトコル「b-CAP」を搭載した教育用アームロボットだが、アニメ系のロボが目立ちまくり! |
Androidタブレットを搭載する学習用キット「ATR-PONKO-X」。スチャラカ感あふるる動きがラブリー? |
二足歩行ネコ型ロボット「ねこだむ30号」のコンセプトデザイン。兵庫県立姫路商業高校の30周年を記念して製作を依頼されたとか |
デザイン画のイメージがかなり忠実に再現された「ねこだむ30号」。人間の肩ぐらいのサイズで存在感アリ |
「ATR-PONKO-X」。ウィング状の耳をパタパタ…人が近づくと荒ぶった動きを見せる |
来場者ご案内デモ中の「ねこだむ30号」。安全装置を内蔵した手で握手も可能 |