――藤井さんはメインの役どころを担当なさるのが初めてだったということですが、決まったときはいかがでしたか?

藤井「本当にうれしかったです。オーデションのときに、監督のエネルギーあふれる説明を聞いて、何て面白い作品なんだろうって思っていたので、絶対に受かりたいと思っていたんですよ。だから受かったときは、本当に家で小躍りをしてしまいました(笑)。それぐらいうれしかったです」

――それでは実際の収録の様子を教えていただけますか?

藤井「制作の都合で、アフレコをかなり早めにやらなければいけなかったんですよ。なので、実は収録自体は2年前くらいにやってます」

岡本「なので、まだ絵もほとんど出来てない状態で、絵コンテを使っての収録でした。だから表情もあまりわからなかったし、最終的にどのような背景になるのかがすごく気になりました。この世界観がどんな映像になるのか……これは役者全員が楽しみにしていたところです」

――絵があまり出来ていない段階でのアフレコというのはいかがですか?

岡本「とまどうところがなかったわけではないんですが、やっていてすごく楽しかったです。というのも、絵が出来上がっていると、口パクと表情に絶対にあわせないといけなくなるじゃないですか。そうすると、繋がり方などで、何となく不自然に感じるところがあっても、無理矢理に整合性をつけなければいけなくなる。でも、今回は逆に絵がなかったおかげでそういったムチャも必要なく、すごく自然に演技が出来たのではないかと思います」

藤井「台本がすごく丁寧に書かれていたので、演技自体でとまどうところはなかったですし、私たちのお芝居にあわせて、演出なども変えていただいたそうです。だから映画では、すごく自然なお芝居を楽しんでもらえるんじゃないかなって思います」

――14歳の演技というのはいかがですか?

岡本「年齢に関しては、実は何も考えていなかったです。声を高くしようとか、そういうこともせず、自然に台本を読んだらエイジの声になっていたという感じです。14歳の頃って、自分はもう大人なんだって思う年頃じゃないですか。考え方も周りより一歩進んでいる、みたいな。今考えるとすごく浅はかなんですけど」

――まさに中ニですからね

岡本「そうそう(笑)。だから14歳という年齢は、特に子供を意識する必要はなくて、感情の触れ幅とか、そういったところに子供っぽさが残っていればいいかなって思いました」

――本人はある意味、大人のつもりですからね

岡本「そうですね。まさにエイジも、自分は一人の男として喋っているのではないかと思います」

藤井「私も14歳を意識して声を作ることはしなかったです。台本を読めばそのままパテマになった……そんな感じですね。劇中に、パテマが幼い頃のシーンがあって、そこはちょっと変わっているかもしれませんが、基本的には台本から読み取れる感情のままに演技をしたという感じです」

――『サカサマのパテマ』は特に場面転換が激しい作品なので、文字だけの情報だと戸惑うことはなかったですか?

岡本「イメージしやすいように、収録中に世界観や舞台背景を台本の裏に書きこんでました(笑)」

――世界観のイメージはすぐにわきましたか?

岡本「最初はやはり難しかったです。ただ、一人で考えても難しかったので、現場に行ってみんなの意見を聞こうと。そうしたら、特に大畑さんの考えと一緒だったので、このイメージで間違いないかなって思いました」

藤井「私は、オーディションで監督から直々に聞いていたので(笑)。監督自らが図を描いてくださったので、私はまったく迷いなく、演技することができました」

――実際に演じて観て、それぞれの役はいかがでしたか?

岡本「強さと弱さを同時に持っているんじゃないかなって思いました。それはエイジだけじゃなく、パテマも同じだと思います。それを2人で助け合いながら進んでいくイメージだったんですけど、いかがですか?」

藤井「アフレコのとき、完成している絵もいくつかあったんですけど、それを見たとき、自分が想像していたよりも、パテマにとって空は怖い存在なんだなって思いました。エイジ君は、私が思い描いていたよりも、ずっと繊細な感じだったんですけど、今回のアフレコは順録りだったので、お互いの気持ち、内面を徐々に理解しながら、収録を進めることができました」

――カットが飛ぶとややこしくなるかもしれませんね

岡本「感情が切れちゃうと、テンションがわからなくなるときがありますからね。その意味では最初から順番に収録できたのは良かったです」