デモ部門で見た面白いロボット
またデモ部門でも面白いものがあったので取り上げておきたい。鈴木技研の「ResoTechLight」だ(画像35・36)。実際のところ、ロボットというよりは水中で無線送電を実現するために実験的に作られたシステムで、もちろん人の目には電磁波が見えるわけではないので、具体的に動きが面白かったというわけではないのだが、そのトライ自体が面白かったので、筆者がロボコンの取材をした際には勝手に設けているデイビー日高賞(賞状の1つすらないけど)をお送りしたい。
大学生や高校生の活躍が目立った各部門の総合結果
そして、いよいよ総合結果の発表である。ROV部門は、トーナメントで優勝したSMDネプチューンROV((有)杉浦機械設計事務所 チームSMD)がそのまま総合優勝を獲得。準優勝は教学用ROV Mk-3(慶応義塾大学 水中開拓チーム)。審査員特別賞は、OYG-YKT(およぐ諭吉先生!)(慶應義塾湘南藤沢中・高等部 慶應電工研)となった。
SMDネプチューンROVについては先ほど紹介させていただいたので割愛させていただくが、準優勝の教学用ROV Mk-3とOYG-YKTについて紹介。教学用ROV Mk-3は、その名前から少し想像がつくと思うが、工学学習用の教材として開発されている機体だ(画像37)。水中ロボットは3次元空間で動作でき、その動作に関わる多様な力を考察することができるという点で、教材に優れているという。ただし、普通科高校では工作環境が限られるためになかなかオリジナルの機体を開発するのは難しいため、教学用ROV Mk-3は特殊な工具を用いずに気軽に製作、改造して実験を行える水中ロボットを目標として開発が進められているという機体だ。
そしてOYG-YKT(画像38)。こちらは慶應義塾大学系の中高一貫校のチームによるもので、コンセプトは「公害の発生している人の入りづらい湖の、沿岸近くの生態系を観察すること」として、機体の開発を進めているという。浅瀬での活動が想定されており、地面に乗り上げないよう、かつ小回りが利く形状にする必要、さらに水中での定点観測ができるように波の影響を受けづらい形状にする必要があると考えた結果、こうした平べったい形になったそうである。カメラやセンサを搭載した上で可能な限り薄くし、周囲の流れの影響を低減する形状を目指しているとした。
そしてAUV部門。優勝は、Darya Bird(九州工業大学 TEAM AILAB)だ。準優勝はKPC-AUV 2013(九州職業能力開発大学校 KPC-AUV)となり、理事長賞はWAQUA君(早稲田大学本庄高等学院 WAQUA)が獲得した。WAQUA君もまた高校生チームである。
総合優勝したDarya Birdは前述したので割愛させていただくとして、準優勝のKPC-AUV 2013はすべてハンドメイドで製作したという機体だ(動画6)。九州職業能力開発大学校はROV部門にも出場しているが、KPC-ROV 2013が全長0.4mとコンパクトなのに対し、こちらは倍以上の0.85mという魚雷型。センサはUSBカメラ、超音波による高度(深度)計、圧力センサによる深度計、方位計などを備えている。潜航深度は最大5mだそうだ。
早稲田大学のロボットはその多くがWから始まる略称(例えば、WABOT=WAseda roBOTなど)だが、系列高校だがWAQUA君(画像39)もその例にならっており、「WASEDA×Aqua×わくわく=無限の可能性!」という意味を持つ。ミッション内容に合わせて、スラスターや各種プローブといったパーツの脱着を容易にしており、変更や拡張を行いやすくしてあるのが特徴だ。全長は0.7mの魚雷型で、重量も20kgと重量級。今回のプールでの仕様だけでなく、河川や港湾での使用も視野に入れて開発しているそうである。
続いては、フリースタイル部門。こちらはN-TASHIRO/M-TASHIRO/A-WAKAが棄権となったため、イルカロボット vs もるペン!の同門対決に。そのため、優勝のみの発表。優勝は、もるペン!(画像40)となった。ちなみに、ペンギンの研究をするため、東京スカイツリーのすみだ水族館に足を運んだそうだ。そして最後は高校生競技部門だが、神奈川県立海洋科学高等学校が優勝した。
というわけで、夏らしくプールで行われた水中ロボコン。いかがだっただろうか。JAMSTECの横須賀本部は目の前が港で風光明媚だし(画像41)、プールは屋内のためかなり室温・湿度ともに高かったので、もうプールか海のどちらかに飛び込みたくなるのが水中ロボットの取材の難点だが(笑)、エントリー数が思った以上に多くて活気があって面白い取材だった。
もちろん、AUVなどはまだまだきちんと動作できないことの方が多いので、開発はこれからという感じだが、今後、AUVは日本にとって非常に重要なロボットになってくるはずなので、こうした水中ロボットを開発している大学生や高校生たちには、どんどん勉強してもらって、将来は優秀なAUVを作ってほしいと思うのが正直な気持ちだ。
というのも、ご存じのように資源の少ない日本にとって、世界第6位という広大な領海+排他的経済水域の海底に眠る資源を回収できるようになれば、とてつもなくメリットがあるからである。それには、水中ロボットの技術は必須だろうし、ROVのみというのは無理だろうから、とりわけAUVの技術が必要になってくるのではないだろうか。こうしたコンペティションから研究者や技術者がどんどん育っていって、将来は環境負荷を極力かけずに海底資源をガッツリ(笑)回収できるようなAUVを開発してくれるようになると嬉しいものである。
なお10月26日(土)・27日(日)には、日本水中ロボネットが北九州市と共催するする水中ロボコンとして、同市の市政50周年を記念した「水中ロボットフェスティバル」が開催予定だ。
それから、冒頭で述べたように浦教授へのミニインタビューと、JAMSTECの見学ツアーはこの後にまた別記事でお届けさせてもらうつもりなので楽しみにお待ちいただきたい。