このピエゾ素子を使ったスマートソニックサウンドは、大中小の3種類で製品化されており、今回採用されたのは中型。どのサイズを使うかは、製品の特性やデザインなどで変わってくるが、LGでは今回、デザインとの親和性などを考えて中型を採用したという。この中型の場合、再生可能な周波数帯域は500Hz~20kHzだ。
このスマートソニックサウンドをテレビに採用するメリットの1つが薄型化だ。これまでの電磁式スピーカーは、振動板をピストン運動させることで振動させるが、この場合、構造的に薄型化には限界があった。しかし、スマートソニックサウンドでは、中型で厚さは1mmとなり、「電磁式スピーカーの1/20~1/30以下になる」(京セラ 取締役執行役員常務 自動車部品事業本部長 触浩氏)という。
また、通常の電磁式スピーカーは、下や背面に音を発生させて反射させるため、音がこもりがちになるが、スマートソニックサウンドは薄型で設計の自由度が高く、本体正面に設置することもできるため、直接音をユーザーに届けられる。
振動板から発生する音を小さな面で発信する電磁式スピーカーに比べて、フィルム全体が振動するため、より広範囲に、均一の音を出力できるのもメリットとされる。同社がスピーカーからの距離1mで測定したところ、従来の電磁式ではほぼ正面にしか音が届かなかったが、スマートソニックサウンドでは180度まで均一に音が届けられた、という。
そのほか、ピエゾ素子はファインセラミックス、フィルムは樹脂で、磁石を使わない。磁性、磁界による他のデバイスへの干渉が低減され、この点でも設計の自由度が向上する。ネオジウムを使わないことで、レアアースの利用も削減できる。
デメリットとしては、広い周波数帯域が確保しづらいという点がある。これについては、フィルムの大型化、ピエゾ素子の積層化によって確保しており、大型の場合は20Hz~20kHzまでの再生に対応している。
今後、量産効果によって低廉化を図っていく意向で、従来の電磁式スピーカーの「高音質と呼ばれるものよりは安くできるのではないか」(触氏)という。来年には年間100万個の生産を計画しており、5年後には100億円規模の事業に成長させたい考え。ちなみに、京セラ製スマートフォンなどに搭載される「スマートソニックレシーバー」は、耳を画面に付けた時に振動で音を伝える仕組みで、今回のスマートソニックサウンドとは構造が異なっている。そのため、この100万個、100億円の計画には、このスマートソニックレシーバーは含まれていない。
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