本選だけでなく予選の結果なども評価の対象に

ファーストとファイナルの両ミッションの競技ポイントの合計900点満点(450点満点ずつ)と、審査員5名による審査員ポイント(600点満点)を加えた総合ポイント1500点満点の中での高得点チームが受賞するのは間違いないが(つまりファイナルミッションに進出した8チームしか大賞は受賞できない)、2月の段階で提出が行われた書類審査に始まって、予選での競技結果などもすべて評価されるのである。今回提出された全チームの書類は、こちらで入手することが可能だ。今後、初めてレスコンに挑戦するというチームは、全チームを比較してみるといいだろう。

評価されるポイントは、コンセプト、技術力、組織力の3点だ(画像10)。コンセプト(レスキューに対する考え方、それを実現するロボットのアイディア)、技術力(チームコンセプトを実現するロボット製作の技術力、それらのロボットの実際の競技でのパフォーマンス)、組織力(ロボット製作を組織的・計画的に遂行するためのチームのマネジメント力、競技中のレスキュー活動におけるチームワーク、相手チームとの連携度)である。

また、コンセプトは2月の書類審査、予選でのアピールシート、ファーストミッションでのプレゼンテーションで評価。技術力は予選の競技結果、ファーストミッションの競技結果とヒヤリング(技術担当の実行委員により各チーム10分間行われる)、組織力はファーストミッションの競技結果とヒヤリングという具合だ。これを総合評価してファイナルミッション開始前に、出場8チームのレスキュー工学大賞候補チームランキングが発表され、その後ファイナルミッションの競技結果と審査員評価が加えられ、さらに選考委員会によって書類審査からファイナルミッションまでもう一度総合評価が行われ、レスキュー工学大賞が決定するのである。

つまり、競技ポイント上が必ずしも1位でなくても、ズバ抜けたコンセプトをきちんと実現していて、組織力が素晴らしかったりすると、レスキュー工学大賞を受賞することもできるというわけだ。

画像10。レスキュー工学大賞決定までのプロセス

競技で高得点を獲得する鍵を握るダミヤン

なお、各競技ポイントは450点満点だが、経過時間と共に3体のダミー人形は体力が減っていくので、事実上満点はあり得ない。よって、実際の競技では、今回の場合ならファーストミッションでは250点以上出せれば、ファイナルミッション進出はほぼ確実で、200点前後がボーダーラインといいう感じだった。300点以上出すと、事実上の最高得点に近いという具合である(今回はファーストミッションで1チームが350点以上を叩き出した)。

またセカンドミッションは、ゲートとフィールド間にあったバンププレート(画像11)がなくなるなど、フィールドの難易度がファーストミッションよりも若干下がり、救出・搬送が容易になる。そのため、第13回大会に関しては、200点以上がファイナルミッション進出のボーダーラインとなっていた。

画像11。被災地までの道路がすでにガレキで被われていたりすることを想定したバンププレート

そしてファイナルミッションは、ファーストミッションやセカンドミッションに比べて大幅に難易度が上がる。そのため、今回は200点を超えれば高得点といったところ。見ていた限り200点以上出すには、3体のダミヤン救出は当たり前だが絶対条件で、それもできるだけ早いこと、そして個体識別も極力成功させる必要があったようだ。

それからダミヤンの個体識別についてだが、これは第9回大会から導入された要素で、要救助者の状態確認とトリアージ(重症度と緊急度で負傷者を分類して治療や搬送の優先度を決定すること)を想定し、ダミヤンには5種類の個性(目の色、出している音の高さ、体重、胸のマーカ、目の点滅)が与えられている。それらを正しく認識して識別に成功すると、加点されるのだ。またダミヤンにはセンサが搭載されているので、雑な救出を行うと体力が減ってしまい、結果として得点が減ってしまう(人と同じように優しく丁寧に救出することが重要)。また、大人と子どもというよりは、成人の男女の体格差に近いのだが、ダミヤンは体格と重量の違いで2種類がある(画像12)。

画像12。ダミヤンは体格(重量)で見て2種類ある。細かくは、目の色、出している音の高さ、胸のマーカ、目の点滅もそれぞれ異なる