今回は32型、タッチパネル、しかも4K2Kという、サイネージ用途としては最高のスペックの液晶ディスプレイを借用することができたが、20~24型程度のタッチ対応フルHDディスプレイで良ければ3万円以下で手に入る製品も既に出ており、タッチスクリーンを駆使したデモは比較的現実的なレベルに落ちてきていると言えるだろう。また、そのクラスの製品でLEDバックライトを採用したものであれば消費電力も20W程度なので、用意するバッテリも少なくて済む。

電池パック部分のみを交換可能。今回は計4本を使用して約6時間のデモを行ったが、さらに明るさを落とせば3本で足りたかもしれない。LEDバックライトを使用した20~25型クラスのディスプレイであればさらに身軽にできるだろう

さて、コミケ会場での使用にあたっては、当日開場前にコミックマーケット準備会のスタッフに実際のデモ環境を見せ、懸念事項がないか確認を得るべきだろう。幸いなことに、机上に置いた液晶ディスプレイが目立っていたからか、今回は申し出るまでもなく早くから複数のスタッフが筆者のブースを視察に訪れたので、電源に関して詳しく説明を行うことができた。ただ、当然のことながらスタッフの確認時に指摘がなかったからといって、安全に関して「お墨付き」を得たわけではなく、管理責任はサークル参加者側にあることは十分認識しておくべきだ。

また、安全面以外の注意点として、音の出る展示は禁止されている。PCとディスプレイのスピーカーは消音し、来場者に音声を聞いてもらいたい場合はヘッドフォンを用意しよう。そして、これは液晶ディスプレイを設置するときに限ったことではないが、映像を見るために立ち止まる人が増えてくると、となりのブースの前をふさいでしまうことが少なくない。周囲のブースに迷惑をかけないよう、通路側の状況には普段以上に気を配り、来場者を適切な位置に誘導するよう心がけよう。

このほか、手にとって表紙をめくって初めて中身が閲覧できる同人誌とは異なり、ディスプレイの映像は付近を通りかかっただけでも視界に入ってくるものだ。従って、成年向けの画像や動画を表示するのも控えるべきだろう。

テクノロジーの進化と個人の幅広い表現に期待

今回のコミケ会期は運悪くこの夏で最も暑い日と重なり、会場内もかなりの高温となった。筆者のサークルは西ホール内の比較的風通しの良い場所に配置されていたため、気温がバッテリ動作保証温度の40℃を超えることはなく、一日通してサイネージ展示をすることができた。

しかし、より過酷な環境だったと伝え聞く東ホールだった場合、途中でディスプレイの運用を中止していたかもしれない(終日西ホールにいた筆者は「今年は死ぬほど暑い」と思っていたが、先に東ホールへ行ってから西ホールに来た人は口をそろえて「西は涼しいですね!」と言っていた)。

繰り返しになるが自前で電源を用意する以上、その取り扱いに関しては一定の知識と細心の注意が求められるし、安全への配慮について適切な説明を行えなければならない。今回もこのデモを見た来場者が次回以降安易に自動車用バッテリなどの使用に走らないよう、現場では可能な限り電源に関する情報提供にも努めたつもりだ。

40年近い歴史とその間に起こったテクノロジーの進化の中で、コミックマーケットで個人が行える活動の幅はさまざまに広がり、より豊かな多様性を獲得してきた。情報機器や通信技術の進化によって、今後この会場でどのような新しい表現が見られるのか楽しみである。