この夏も8月10日からの3日間、東京ビッグサイトで開催された同人誌即売会のコミックマーケット(コミケ)。マンガ、アニメ、ゲームなどをはじめとするサブカルチャーのイベントとしては世界最大の規模を誇り、記録的な猛暑にもかかわらず3日間の来場者数は約59万人と過去最高を更新した。
サークル参加者が持ち寄るのは紙媒体の同人誌だけにとどまらず、ステッカー等のグッズ、ガレージキット、衣装、音楽・映像作品、ソフトウェアや電子回路に至るまでさまざまな作品に広がっている。あらゆるジャンルのファンやマニアによる多様な表現活動が受容されていることが、このイベントの大きな魅力となっているのは間違いない。
ここ数年では、個人でも利用しやすいクリエイションツールや、長時間のバッテリ駆動が可能なモバイル機器が急速に普及していることから、ノートPCやタブレットなどを持ち込んで映像やソフトウェアのデモを行うサークルが増えている。走行中の車や鉄道から撮影した展望ビデオや、スマートフォンで遊べるゲームなどの展示は、会場内でそれらのジャンルが集まるエリアに足を運べばいくつも見つけることができるだろう。
さて、コミケは営利追求の場ではないので度を過ぎた宣伝行為は控えるべきだが、自らの限られた出展スペースをどのようにデザインし、頒布物をいかに魅力的に見せるかは、それ自体が表現活動のひとつであり楽しいものだ。しかし、先のタブレットのように手軽に使える表示機器の場合、画面サイズが10インチ前後と小型なためいまひとつ迫力に欠けるし、多くのサークルがタブレットを利用するようになったことで、映像展示というインパクトも次第に薄れつつある。可能ならば、せっかくの作品をもっと大きな画面で展示し、来場者に印象づけたいところだ。
このような発想から、今回はコミックマーケット84にサークル参加した筆者が、デスクトップPCサイズのディスプレイを果たして持ち込めるのか - コミケ会場において「デジタルサイネージ」(電子看板)を実現できるのか - その可能性を探ってみた。
コミックマーケット84の会場で実際に展示した32型高解像度タッチディスプレイ。今回は共同で活動しているサークルと連続したスペースで出展したので、2サークル分の幅を利用して同人誌の陳列と写真の展示を行った |
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