「カシオアート」の熱意を受け取ったサンリオのキャラクター
前編では主に、立体的なデジタル絵画「カシオアート」の技術面について、開発担当の坂牧氏(カシオ計算機)のお話を紹介した。後編ではカシオアートとのコラボ第1弾に関して、プロジェクトへの協力背景や制作に関する裏話などを、サンリオ ライセンス事業本部 マネージャー 吉澤光博氏にうかがった。
「カシオアート」のデジタル技術をユーザーに伝えるという、大きな役目を担うことになったハローキティたち。カシオの技術と日本が世界に誇るキャラクターのコラボレーションは、サンリオの協力がなければ実現できなかったものだ。
―― 今回のコラボレーションのお話を聞いたとき、まずどう思われましたか? カシオさんからのご提案だったそうですが。
吉澤氏「デジタルカメラ(EXILIM)や女性向けの腕時計(Baby-G)でのコラボ経験はありましたが、アートというお話は初めてでしたので、やはり意外ではありました。作品の平均価格帯が3万円~5万円とお聞きした時は、サンリオショップではその価格帯の製品を扱う機会が少ないこともあり、店頭で売れるだろうかという心配が多少ありました。全国で230店ほどあるサンリオショップでは、平均の製品単価はそれほど高くないんです」
―― 確かに、サンリオさんのイメージからすると、メインターゲットはティーンという印象があります。
吉澤氏「その辺は各店の立地で違うんですよ。『HELLO KITTY × カシオアート』を先行販売した西銀座のサンリオワールドギンザですと、ご年輩の方や旅行中に立ち寄られるお客さまが多いこともあり、サンリオキャラクターの家電製品など、やや高価な製品も扱っています」
―― ファンやアイテムも幅広くなってきているということですか。
吉澤氏「はい。キティは来年で誕生40周年ですからね。今の中心的なファン層は20~40代の方々なんですが、初期のファンである団塊の世代がキティグッズを与えていた子どもたちが成長し、さらに自分の子どもたちに与えているという状況です。つまり3世代のファンがいるので、子どもさん向けの文房具や雑貨から、シルバー世代向けのキティグッズ、例えばワンポイント入りステッキなど、世代に沿った場所でさまざまな製品を販売しているんです」
―― 息の長いキャラクターならではのお話ですよね。
吉澤氏「これは社会背景の変化も大きいでしょうね。20年前ならキャラクターのTシャツなどはお子さま向けというイメージでしたけど、今では年輩の方も含めてキャラクター物に抵抗がないですからね。むしろ、キティを介してお祖母ちゃんとお孫さんが会話できたり、キティグッズをプレゼントしたりというギフト需要が増えているほどです」
―― そういった背景の中でも、「HELLO KITTY × カシオアート」の価格は多少お高めですよね。その辺の懸念もありながら、今回のコラボレーションを決めた理由はどんなところですか。
吉澤氏「そこはカシオさんの熱意につきます(笑)。カシオさんによるオリジナルのサンリオキャラクター作品もすでに制作準備されていましたし、『どうしてもやりたいんだ』という熱い想いをお聞きして、これは弊社としてもお受けすべきだろうと」
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