直感的に操作できる確かなタッチ性能
ここまでは、ペン操作に関するお話をしたが、これ以降は指での操作、つまり「Cintiq 22HD touch」のマルチタッチ機能についてお話したい。「Cintiq 22HD touch」は、マルチタッチに対応しており、1本の指でのタップ操作のほかに、スマートフォンなどでおなじみの、2本の指を広げるような操作(ピンチアウト)で画像を拡大したり、反対に2本指を狭める操作(ピンチイン)で画像を縮小したり、さらに広げた2本指を回転させることで画像を回転させたりできる。
スマートフォンやMacのトラックパッドの操作に慣れていらっしゃる方なら、「多分こうすればこうなるだろうな」と思うであろう操作がほぼ通じるので、すんなりと操作に慣れることができた。そして、タッチペンと指での操作が可能なデバイスでストレスとなりがちな、ペンを持つ利き手が画面に触れた場合の誤動作も、ほんの少しコツを身につければ全く気にならない印象だ。ペンと画面との距離が近い状態にあれば、利き手が触れても動作しないようになっているので、利き手が画面に触れそうなときは、ペンが画面から離れ過ぎないように気をつけるとよいだろう。
また、タッチ操作が苦手な方は、ファンクションキーと本体裏面のトラックパッドを利用して、画像の拡大縮小、回転、スクロールを行うことができる。筆者の環境では、画面タッチを利用した方が直感的な操作が可能だったが、物理キーを使用した方が反応はより軽快だと感じた。これは一長一短ある部分なので、複数の選択肢があるのは非常に好印象だ。
最終回では「Cintiq」と「Intuos」を総合的に考察
今回、初めて液晶ペンタブレットを本格的に使ったのだが、一番驚いたのは長時間使っても疲れづらいという点だ。仕事でペンタブレットを使用する人間としては、体への負担が少ないというのは非常に大きなポイントだ。なぜなら、作業時間が常に限られている中で、作業終盤でも疲れが少なければ、最後にもう一歩、二歩と仕上がりを高める余地が広がり、ダイレクトにクオリティへとつながるからだ。また、「Cintiq 22HD touch」のタッチ操作については、評価する前から「ワコム製品だから良いに決まっている」とは思っていたが、実機に触れてあらためて、期待を裏切らない性能であったと感じた。
次回はいよいよ最終回。「Cintiq 22HD touch」の総合評価を行いたい。「Cintiq 22HD touch」と「Intuos5」それぞれの特徴などを比較しながら、商業用フォトレタッチの現場における使用感について、総合的に考察していこうと思う。
御園生大地
フォトグラファー・レタッチャー・3DCGクリエイター。1974年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業。撮影会社に12年間在籍後、2013年からフリーランスとして活動。