筆者が「Cintiq 22HD touch」での操作にメリットを感じた理由として考えていくうちに、その秘密は以下の2点に隠されていると考えた。

(1) 直接画面をペンタッチするため、画像の狙った箇所を正確にクリックするのが容易。
(2) 長いストロークの曲線を描く場合、直接画面に描くときれいな線を描きやすい。

液晶に直接タッチできるため、狙った箇所を自然な筆圧でクリックできる

まずは(1)についてお話ししよう。例えばパスを切る場合に、アンカーポイントの位置を1ピクセル単位で位置調整するとする。普段Intuosで操作している場合は、画像をドットが見える程度に拡大して表示し、ペンを持つ右手にグッと力を入れて細かい手ブレが起きないようにして、クリックする箇所を狙う必要がある。パスを切る作業は下準備にすぎないため、なるべく時間をかけたくないとの思いから、力が入ってしまう場合が多くなっていると思う。

一方、Cintiqで操作をしている場合、直接画像の上をペンで触るだけなので、肩の力を抜いた状態で、自然に狙ったポイントをクリックできる印象だ。余分な力が必要ない分、腕の力は筆圧の調節に集中でき、これが「自分の思った通りの筆圧を繊細に表現してくれている」感覚につながっていると思われる。そして、長時間の使用で腕が疲れないことも、ここが理由で起こっていると思う。全ての操作が自然なのだ。

髪の毛やまつ毛などの繊細な曲線もブレずに描くことができる

続いて、(2)についてお伝えしたい。マスクワークや、存在しないまつ毛や髪の毛を描く際など、Intuosで長いストロークの曲線を描こうとすると、どうしても線にゆらぎというか、ブレが出てしまうことがある。操作面が画面と離れたところにあるIntuosで、画面上のカーソルの位置を意識しながら、狙った曲線をスッとまっすぐに描くのはなかなか難しい。

直接画面に線を描けるCintiqは、この操作も非常に自然に行うことが可能で、下絵をなぞって線を描くような場合も美しい線を描くことができる。全ての操作で余計な力を使わない印象だ。こういった要因が重なって、「繊細で思った通りの描画」を「力を入れずに自然な状態で」描くことができるのが、液晶ペンタブレット「Cintiq」の強みであり、フォトレタッチャーにとってもメリットがあると言えるだろう。ペンによる入力装置としては、液晶ペンタブレットのほうが人間の自然な動作に近い、という印象だ。

逆に、Intuosの方がメリットがあると感じるのは、マッピングでペンタブレットの操作エリアを小さくしておけば、画面の端から端までカーソルを移動する際にとても小さな手の動きで済むことと、携帯性に優れることだろうか。これはこれで得がたいメリットである。