実はこの場所、田中本陣跡といって、東海道五十三次の第二の宿である川崎宿の元宿泊施設なのだ。本陣とは大名や公家など、高い身分の者だけが宿泊できた特別な宿なのである。……そんな豆知識はもはやゾンビのような足取りで先へ進むOさんには届かないのだけど。
とはいえ、さすがの「AQUOS PAD」にもそろそろ終わりが見えてきた。あと19%。ここまでたっぷり使い込んでバッテリーを消耗させたかいがあったというものだ。
いさご通りを抜け、川崎駅前の商店街へと入っていく。そうだ、ここならドラッグストアがあるはずだ。
このとき、Oさんの右膝はとっくに限界を超えていた。右膝は腫れ上がり、歩みを進めるたびに痛むらしい。何が彼を突き動かすのか。そして、この企画は誰得なのか?
それはそれとして、実は私も小指が痛み始めていたところだった。サポーターとテーピングで何とか足を支え、気力を振り絞ってさらに進んでいく。
先ほど「AQUOS PAD」に終わりが見えてきたと書いたが、その認識は誤っていたようだ。残量たったの19%ではなく、"まだ19%もある"のだった。