将来の"科学立国日本"を担う若者が全国より甲子園に集結!第二回「科学の甲子園」の栄冠はどのチームに輝くのか!?
昨年、第一回大会として、開催された「科学の甲子園」。日本全国の高等学校、中等教育学校後期課程及び高等専門学校などの生徒たちを対象とした科学技術・理科・数学などにおける複数分野の競技を通じて、科学好きの裾野を広げるとともに、トップ層を伸ばすことを目的としている。今年も、昨年と同じ兵庫県立総合体育館を決戦の場に3月23日・24日の二日間の日程で開催された。
競技会場となった兵庫県立総合体育館には、本大会に合わせてオーディエンスも楽しめるよう、大型のスクリーンが3箇所に設置。広い体育館でありながら、選手たちの試行錯誤する様子が手に取るように工夫が凝らされていた |
時同じくして、甲子園球場では春のセンバツが開催されるなか、兵庫県立総合体育館には各都道府県大会を勝ち抜き、全国大会へ駒を進めた47チームが"理科・数学・情報"という複合分野での競技に臨んだ。
生物、化学、地学などの問題によって構成された筆記競技に加え、この「科学の甲子園」の最大の特徴は"実際に手を動かす"実技競技にある。
第二回大会では、「アルコール発酵により発生した気体(CO2)をできるだけ多く捕集し、CO2濃度の測定値から、発酵で発生したCO2の全物質量(mol)と発酵によって生成したアルコールの質量(g)を求め、【レポート作成要領】によりレポートを作成せよ」という「実技競技1.灘の酒」。金平糖の表面積を求める計測方法を考案せよという「実技競技2.金平糖」など、筆者が問題を見ても「あ、こうすれば求められるかも」というきっかけすら掴めないようなハイレベルな問題ばかり。しかも、今回第二回大会では新たな取り組みとして、「実技競技3.君に届け! 熱いメッセージ!」と題した、プログラミングを要するIT分野の課題が出された。
この「実技競技3.君に届け! 熱いメッセージ!」は、セキュリティベンダーのシマンテックも関わっている。担当者に話を伺うと「シマンテックでも、エデュケーション分野、特に高校生や高等専門学校生に対して"セキュリティ"という切り口でアプローチしており、その一環で今回の「科学の甲子園」にも参画することになりました。主催者であるJST、独立行政法人科学技術振興機構からのリクエストは非常にハードルが高く、社内リソースで言えば延べ120名近くのスタッフを動員しました」という。
気になるその実技競技の内容は、「加速度センサを持つデバイスを活用して文字入力を行う方法を考え、それを実現させるためのプログラムを作成すること」、さらに「10分の競技時間内に"春は咲く"という曲の歌詞をローマ字で入力すること」と、自由闊達な発想力とそれを具現化するプログラミング能力が試されるというもの。
少々ハードルが高すぎるのでは?という筆者の心配はよそに、競技がスタートするやいなや、全国の頼もしき若き代表たちは、センシングデバイスを操作してみたり、ノートに図を書いて問題を整理してみたりと各々動き出す。シマンテック担当者によると、この問題には十人十色、それぞれのアプローチが存在し数学のように答えはひとつではない。審査基準として、文字入力に対するアプローチ、つまりプログラムの設計に係わる発想力とプログラムの内容、そして文字入力数で審査を行うとのことだったが、大いに誤算があったようだ。
10分間で"春は咲く"の歌詞を入力する際に、メインステージ上のスクリーンに映し出された入力経過リアルタイム表示には、あれよあれよという間に各チームの文字入力数がカウントアップされていった。これには問題を作成したシマンテック担当者も驚きを禁じ得なかったようだ。
「正直、今の高校生たちを過小評価していました。じつは、同じ問題を大学生などにも試してもらったのですが、文字入力に漕ぎ着けるまででやっと……。科学の甲子園という場に集まる選手たちだからそれらは超えるであろうと踏んでましたが、まさかここまでとは」と、今回のプロジェクトを推進してきたシマンテックの吉田隆之氏。
基本PCに向かい競技を行うため、オーディエンスから見ると「選手たちが何を行っているのかよくわからない」ということから、スクリーン上に入力経過をリアルタイム表示させるための設備を用意した彼ら自身も、そこに映し出された数字にはオーディエンス同様にエキサイトさせられたことだろう。
固唾を呑み込みながら選手たちの文字入力を見守り、メインスクリーンに表示されるリアルタイム競技結果をコントロールしているシマンテックの面々。提出されたソースコードもすべてチェックし、その発想や正確性をチェックしていた |
そして、昨年の第一回大会で好評を博していた競技、「実技競技4.クリップモーターカーF1」では、レギュレーションを設け本物のフォーミュラ・ワンのようにある部分までは同一のコンディションでマシンを作成し、その範囲内で速く走るためのアイディアを詰め込んでいく。思ったように走ってくれないマシンもあれば、勢いよく好タイムを連発するマシンもあり、競技者はもちろん、オーディエンスも大いに盛り上がっていた。以上の、4つの実技競技を終え、筆記競技の結果を踏まえて最終的な優勝校の発表が行われた。