特に電波改善宣言以降、基地局数を急速に拡大したソフトバンクは、3月時点で19万局に達し、ドコモやKDDIの10万局の倍近い数の基地局を設置した。この基地局数を各社の総契約数で割ると、ドコモは600人、KDDIは350人、ソフトバンクは150人になり、1つの基地局への負担が少ないとアピールする。もっとも、2社とも混雑する都市部のマイクロセル化は推進しており、本来は「混雑したエリアでの基地局数と収容数」を見るべきだが、こうした資料は提示されていない。
さらに、AXGP(TD-LTE)基地局を2.5万局設置。公衆無線LANスポットを45万局設置することで、携帯基地局以外も使った小セル化のネットワークを構築した。これらに加え、今回「初めて公表した」という数字として、家庭向けに配布した無線LANルーターの数が340万台に上っていることを明らかにした。自宅ユーザーが携帯回線ではなく家庭内のネットワーク経由で通信するようになることで、トラフィックのオフロードが可能になる。実際に利用されているルーターは二百数十万台程度だというが、無線LANを使うユーザーと使わないユーザーでは、トラフィックに倍の開きがあるそうで、オフロードの効果は出ているという。
いずれにしても、孫社長は「戦略的に小セル化を行ってきた」とアピールし、これによって急増するトラフィックに対応してきた点を強調する。
さらに今回、これに加えて買収したイー・モバイルのLTEネットワークを活用する「ダブルLTE」を3月21日から開始する。これは、ソフトバンクの2.1GHz帯のLTEとイー・モバイルの1.7GHz帯のLTEを使い、混雑している基地局があったら、もう一方の基地局に端末を接続させることで混雑を解消しようという試みで、まずはiPhone 5、iPad mini/Retinaディスプレイモデル(いずれもLTE版)から対応する。
イー・モバイル基地局もソフトバンク基地局も仮想的に同じネットワークとして認識されるように手を加え、イー・モバイル基地局からもソフトバンクのコードを発信するため、ソフトバンクの端末にとっては、イー・モバイルかソフトバンクの基地局という区別はできず、「空いている基地局に自動的につながる」という状況になる。対象となるiPhoneなどのユーザーにとっては、いつの間にか普段は混んでいる場所で通信がしやすくなる、という状況が期待できる。もちろん、イー・モバイル基地局接続中でもCSフォールバックは正常に動作し、音声通話はソフトバンク基地局経由で行える。
イー・モバイルの基地局が混雑している場合は移行せず、空いている場合に接続先として利用されるようだ。まずは東京・池袋からスタートし、4月中には山手線圏内の対応を終了させ、今後順次混雑した都市部を中心に対応を進めていく。基本的には2.1GHz帯LTEと1.7GHz帯LTEはエリアが重なるように展開し、2014年3月末までに両者で3.8万局まで基地局を拡大する考え。