――住宅を購入する際に、重視しなければならないポイントとは、どのようなことでしょうか?
田中氏「住宅を購入すると決めたら、まずは自分たちのライフスタイルを見つめなおすことが重要です。例えば、家族構成はどのように変化していくのか、車いじりやガーデニングなどの趣味を楽しめる家にしたいのか、10年後はどのような暮らしを想定しているのかなど、ライフスタイル全体を考えなくてはなりません。
現在の趣味や、自分たちの暮らしの状況はもちろん大切ですが、子どもが成長して独立したらどうするのかといった、今後の変化も見据えた家族の在り方を考えて設計したほうがいいでしょう。
例えば、40代の方が3階建ての2世帯住宅を建てる場合、20年後の家族の在り方について考えたほうがいいですね。現在の家族構成では、新築時に1階に親世帯、2階と3階は世帯主のご家族が住むとすると、20年後には親が亡くなってしまう可能性もありますし、子どもが独立して巣立つこともあるでしょう。
そのとき、3階建ての2世帯住宅は、夫婦2人だけでは持て余してしまいます。あいたスペースをどう活用するか、そういったことも考える必要があるのです。
このケースの場合、例えば将来的にリフォームして、どちらかの世帯を賃貸にするということも考えられます。そうした将来のライフスタイルの変化を見越したリフォームの相談までできる会社に施工を頼むと理想的ですね」
――20年、30年と同じ家に住み続けることは可能なのでしょうか。
田中氏「昔は20~30年で家を取り壊すのが一般的でしたが、いまは住宅の性能が格段にアップしました。今後は欧米のように、何十年も住み続けることができる家が増えると思います。現在では、2009年に施行された『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』に基づき、長期優良住宅(※)が主流です。長期優良住宅はコストも上がりますが、次世代にも引き継げると考えれば決して高くないのではないでしょうか。
また、住宅を資産と考えたときにも、長期優良住宅は有効です。現在では、20~30年前の住宅の建物の価値はゼロとなるのが一般的ですが、住宅を手放すときにそれでは悲しいですよね。いい条件で売却するためには、耐震性が高く、リフォームがしやすい住宅がいいと思います」
(※)長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のこと。下記の項目について、国の定めた基準を満たす必要があり、所管行政庁に申請し、認定を受けなければならない。
●長期優良住宅に必要な条件
・構造躯体の劣化対策
・耐震性(耐震等級2以上)
・維持管理・更新の容易性
・可変性
・バリアフリー性
・省エネルギー性
・良好な景観の形成に配慮した居住環境
・一定の住戸面積を有する住宅の建築計画及び一定の維持保全計画の策定
耐震性を確保しつつ、希望の住宅を建てる方法とは?
――先ほど、耐震性の話がありましたが、東日本大震災以降、住宅購入に際してニーズの変化などはありましたか?
田中氏「家族のきずなに注目が集まり、2世帯住宅を希望する方が増えているようです。また、耐震性や省エネにも注目が集まっていますね」
――耐震性を確保するために、間取りやデザインなどをあきらめている人が多いという調査結果があります。この2つを両立することは不可能なのでしょうか?
田中氏「例を一つあげるとするならSE構法を採用した住宅なら、両立可能なのではないでしょうか。住宅の構造は主に、木造、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)に分類されますが、SE構法は木造のひとつです。
この工法の特徴は、強度の高い構造用集成材で構成される柱や梁を専用の「SE金物」で強固接合されていることです。そのため、通常の木造住宅に比べて壁や柱の数が少なくても、耐震性が高いことで注目されています。
SE構法(左)は、従来の木造住宅(右)と比べ、柱の数が少なくてすむ |
阪神・淡路大震災のときに、「木造住宅は耐震性が低い」といわれましたが、そんなことはありません。当時、倒壊したのは1981年(昭和56年)6月1日建築基準法施行令改正以前に建てられた住宅がほとんどです。現在は耐震基準が強化されていますし、外壁材の進化などで防火や耐火の備えも充実しています。木はしなるので揺れに強い特徴があります。木造住宅は決して弱くないのです。SE構法は、木造住宅の耐震性をさらに高めたものといえます。
この構法は、木造ラーメン構造であり、通常の在来工法よりも少ない数の柱と梁、そして若干の耐力壁で建物を支えます。その柱と梁を独自開発のSE金物で接合することにより大空間を実現することが可能です。 そのため、すっきりとしたLDKや吹き抜けを確保することができ、デザイン性を両立させることができます」
柱と梁(はり)でしっかり支えられた広々とした空間 |
――耐震性やデザイン性のほかにメリットはありますか?
田中氏「大空間を確保できる一方で、大きな窓を設置しやすいのも魅力の一つ。そのため、風通しがよく、自然の恵みを居住空間に取り入れることができる快適な居住環境とすることが可能です。同時に、エアコンを使う機会を減らすことにもつながり、省エネ効果が期待できます。また、十分に採光できるので、照明器具を使う機会も少なくなりますね。
コストはやはり、通常の木造建築より高くはなりますが、耐震性や快適性を確保した上、希望通りの住宅が建てられるので、コスト以上の価値があるといえるのではないでしょうか。また、耐震性はそのままで間取りを変えられるなど、将来売却するときにも有利になると考えられます」