トレンドマイクロは、現在の代表取締役会長のスティーブ・チャンとその親族によって、1988年、米国ロサンゼルスで創業した。その後、本社は台北に移転する。日本では、1991年に初リリースとなる。当時は、アンチウイルス的な製品であった。その後、ウイルスバスター2004インターネットセキュリティで、総合セキュリティ対策ソフトへと移行する。その後は、クラウド対応などを行い、現在へと至る。
製品ラインナップ
コンシューマ向けの製品は、非常にシンプルである。
- ウイルスバスタークラウド
- ウイルスバスタークラウド 保険&PCサポート版
- ウイルスバスターモバイル for Android
である。ウイルスバスタークラウドには、Windows版とMac版が同梱している。あとは、サポート期間が、1年や複数年の製品が用意されている。他社のように、機能をアンチウイルスなどに特化した製品はない。その一方で、ウイルスバスタークラウド 保険&PCサポート版という製品をリリースしている。まず、保険であるが、クレジットカードの不正使用による被害を年間最高100万円まで補償する。さらに被害のたびに1万円の見舞金が支払われる(警察などへの被害届が必要)。
PCサポートでは、PCの操作方法やインターネット接続など、ウイルスバスター以外のPCトラブルに関するサポートを行うものだ。このシステムを導入した当時、トレンドマイクロでは、ユーザーのためのワンストップのサービスとしたいと語っていた。こういったサポートも含め、製品ラインナップのシンプルさ、いずれも初心者を強く意識したものといえるであろう。また、セキュリティとも関係する次の製品も提供している。
- トレンドマイクロオンラインストレージSafeSync
- パスワードマネージャー
パスワードマネージャは無償版も提供されている。無償版では、5つまでのIDとパスワードが登録できる。5つならば、覚えられないこともないだろう。やはり、数が多くなった場合に、使いたい製品といえるだろう。
ウイルスバスタークラウド
Windows版を使い、ウイルスバスターの機能を概観してみよう。まずは、メイン画面である(図33)。
コンパクトであるが、ウイルスバスターの機能は、すべてここからアクセス可能だ。ウイルスバスターでは、Webサイトの安全性を評価するWebレピュテーションなど、Eメール、ファイルの3つのレピュテーションを使い、脅威を未然に防ぐことができる。代表的なのが、Webブラウザに搭載されるTrendツールバーである。これをSNSにまで発展させたのが、SNSプロテクションである。2013では、mixi、Twitter、Facebookに加え、Google+、Linkedin、Weibo、Pinterestに対応し、危険なWebサイトをわかりやすく表示する。
また、ページ上のURLにマウスを重ねるだけで、安全性を確かめるURLマニュアルスキャンも実装された。さらに、これらの機能は、Mac版でも使えるようになった。SNSは利用者も増えているが、その一方で脅威も発生している。2013版では、Facebookプライバシー設定チェッカーも実装された。
Facebookでは、基本的に名前と顔写真を公開する。そして、個人情報をどこまで公開するかといった設定が行われる。そこで、注意すべき設定内容を通知するものである。最後にぜひ覚えておきたい設定を紹介しよう。起動時の設定である(図36、図37の[その他の設定]を選ぶとい表示される)。
起動時にどこまでの脅威の検出を行うかの設定である。低スペックのPCなどでは、起動時間を短縮することができる。
初心者にもやさしいセキュリティ対策ソフト
ウイルスバスターは、ユーザーが可能な設定項目はかなり少ない。つまり、初心者には使いやすいものとなっている。逆にいえば、上級者には物足りない感覚も残るであろう。製品ラインナップなどからも、初心者向けといっても過言ではない。しかし、注意すべき点もある。保護設定画面を選ぶと、図37のようになる。
[スキャン設定]の初期設定で、[ZIPファイルなどの圧縮ファイルをスキャンする]のチェックが入っていない。多分、スキャンの時間短縮が目的と思われる。しかし、ダウンロードで使われる機会が多い。できれば有効にしたい。同様に、外付けドライブ上のプラグラムの自動実行も許可されている。こちらは微妙なところであるが、安全を求めるなら許可しない方がよいだろう。このあたりは初心者にこのような設定変更は難しいかもしれない。初期設定段階で、この設定となっている配慮がほしかったように思う。性能面の評価項目に関していえば、ほとんどが平均的といったところ。日本における情報発信に関しては、非常に豊富である。サポートなどを含め、設定などに自信のないユーザーならば、ウイルスバスターは候補となるだろう。