日本語での情報提供
サポートでは、パッケージに記されたサポート情報などを元にまとめた。情報発信では、実際にWebなどで紹介されている事例を集めた。
分類上、漏れてしまったものや筆者が見つけることのできなかったものもあるかもしれない。その点については、ご容赦いただきたい。
ESET
- 電話サポート(年中無休、9:00~17:00)
- Webフォームサポート(年中無休、24時間)
- Webにて、FAQ検索
- 月次マルウェアランキング
- ウイルス情報
ホワイトペーパーやブログなども提供しているが、本社サイトのものがそのままリンクされており、英文のままである。セキュリティ情報としては、さほど多くはない。
カスペルスキー
- 電話サポート(年中無休、9:00~18:00)
- Webお問い合わせ(年中無休、24時間)
- 24時間Q&A安心サポート
- http://www.viruslistjp.com/
- Webでの脅威解説
24時間Q&A安心サポートは、内容的には各社のWeb上のFAQ検索と似たシステムであるが、ウィンドウに出現するバーチャルなサポート担当者に対してテキストベースのやりとりを行うもので、同社Webの適切な解答を得られそうなページへ自動的に導いてくれる。テキストの表示の仕方なども凝っており、文字が流れるように表示される仕組みなど、一般的なFAQよりも使いやすいという印象であった。http://www.viruslistjp.com/では、すべてのセキュリティ情報とあるが、その名にたがわぬ情報量といえる。ただし、国内に特化した情報はいまのところあまり多くはない。
シマンテック
- 電話サポート(月~金、10:00~19:00)
- チャットサポート(年中無休、24時間)
- サポートによっては、リモートサポートもあり
- Webにて、FAQ検索
- ノートンアカウント
- ノートンコミュニティ
- ノートンセキュリティレスポンス(ブログ)
- インテリジェンスレポート(月次)
- ホワイトペーパー
- 駆除ツールなどの無償提供
大手ベンダーらしく、情報量多さは目をみはるものがある。ホワイトペーパーや月次のレポートは、非常に内容の濃いものである。残念ながら、いずれも世界規模で収集・分析されたものが多く、国内に特化したものは少ない。また、コミュニティによる、ユーザーらによる有志の活動も、ユニークなものだ。
ビットディフェンダー(ソースネクスト)
- 電話サポート(年中無休、10:00~18:00)
- チャットサポート(平日のみ、10:00~18:00)
- メールサポート(年中無休、10:00~18:00)
- Webにて、FAQ検索
- Webにセキュリティ関連のコンテンツあり
定期的なレポートや情報発信は行われていない。ソースネクストのWebページでは、セキュリティに関連するコンテンツもあるが、他と比較すると物足りない印象を受ける。
トレンドマイクロ
- 電話サポート(年中無休、9:00~21:00)
- Faxサポート(年中無休、24時間)
- チャットサポート(年中無休、9:00~21:00)
- メールサポート(年中無休、24時間)
- Webにて、FAQ検索
- セキュリティ総合情報サイト
- ウイルス解析者によるブログ
- インターネット脅威レポート(毎月、半年)
- 駆除ツールなどの無償提供
国内で発生した事例やそれをベースにした分析など、頻繁に発表されている。月次の脅威レポートも国内と全世界の両方を掲載し、国内状況との差異がわかる。ナレッジベースなどの初心者向けのセキュリティ情報も提供している点にも注目したい。初心者を意識した手厚いサポート体制といえる。
マカフィー
- 電話サポート(年中無休、9:00~21:00)
- チャットサポート(年中無休、9:00~21:00)
- Webフォームサポート(年中無休、24時間)
- Webにて、FAQ検索
- セキュリティ解析センター
- マカフィーブログ
- マカフィーセキュリティニュース(月1ペース)
- 脅威レポート(毎月、四半期)
歴史の長いベンダーでもあるので、これまでに蓄積された情報の多さが目をひく。ウイルス図鑑などは、過去のウイルス例を見ることができ、興味深い。最近では、McAfee Labs東京主任研究員の本城信輔氏による国内の脅威事例などからの情報提供は、わかりやすくまとめられている。
一般的に、サポートなどを頻繁に利用する必要があること自体、あまり望ましいことではない。特にセキュリティ対策ソフトの場合、問題なくインストールでき、あとはほとんど意識することがないという状態が理想形である。しかし、ウイルス感染などに起因するトラブルに遭遇してしまった場合、知識の少ないユーザーでは対応は難しいであろう。そこで、どのようなサポート体制が敷かれているかをみておくことも重要である。これについては、企業の大きさがそのまま、サポートの充実度になっているといえる。
次に注目したいのは、情報発信である。セキュリティ対策の専業ベンダーの多くは独自にラボなどを設立し、24時間体制で脅威分析を行っている(当然その結果が、パターンファイルやウイルス対策に反映される)。それらをユーザー向けに発信しているかどうかを見る。これらの情報は、脅威から身を守るためにも有益な情報となる。ホワイトペーパーのようなやや専門的なもの、ニュースなどによるいち早い情報提供、ブログなどで初心者にもわかりやすく解説などといった種類がある。こちらに関しては、形式はともかく、3大ベンダーの情報量が充実している。特にトレンドマイクロでは、国内の状況や分析なども充実している点を評価したい。一方、ソースネクストは、専業ではないためか、ややさびしい結果となった。
新たなライセンス形態にも注目
冒頭で触れたように、近年、モバイルデバイスの普及が進み、これらもまた攻撃者の攻撃目標となっている。そこで各ベンダーは、Android用のセキュリティ対策ソフトもリリースしている。これまでは、PC用で1台3年や3台1年といったライセンス形態が主流であったが、ここに来てマルチデバイス対応のライセンス形態が登場してきた。具体的には、PC版、Mac版、Android版などをすべて同梱して、複数台のデバイスで使用可能とするものだ。実際に、今回の評価で使用したパッケージのライセンスは以下のようになった。
- ESET PC版、3年1ライセンス。無償でAndroid版が同梱(3年1ライセンス、記念パック)
- カスペルスキー PC版、Mac版、Android版が同梱。個人が使用するデバイスならば台数制限もない。期間は1年
- シマンテック PC版、Mac版、Android版が同梱。所有する3台までのデバイス。期間は1年
- ビットディフェンダー(ソースネクスト) PC版、1台まで。期間はOSがサポートされるまで(ちなみに、Windows 7は2020年1月14日までとなる)
- トレンドマイクロ PC版、Mac版が同梱。所有する3台までのデバイス。期間は1年
- マカフィー PC版、Mac版、Android版が同梱。個人が使用するデバイスならば台数制限なし。期間は1年
まず、サポート期間について補足したい。各社とも1年以外に、2年や3年といった期間のライセンスがある。もちろん、これは価格に反映され、長期になれば割安になる。それよりも注目したいのは、1つのパッケージで複数のデバイスをサポートするかどうかである。こちらもベンダーによっては、PCのみといった単独製品を出していることもある。しかし、筆者の見た限りでは、各社ともにマルチデバイスをサポートした製品を主力と位置付けている。現時点では、PC、Mac、Androidの3種のデバイスをサポートした製品が対応度が高いといえるだろう。Androidデバイスを持つユーザーならば、たいていがPCかMacのいずれかを所有していることが多い。
今後はこのようなライセンス形態が主流となると思う。これは筆者の私見であるが、今はPCがデジタルデバイスの中心であるが、そのうちモバイルデバイスが中心となるのではないかと予想している。そうなった頃には、またライセンス形態も変わってくるだろう。そして、もう1つ注目すべきは、インストール可能なデバイス数である。今回の製品では、カスペルスキーとマカフィーが、個人の使用するデバイスであれば台数制限をなしとしている。一方、複数デバイスをサポートしながら台数は3台までとする製品もある。もちろん、所有するデバイスが3台以下ならば、意識する必要はない。しかし、今後、スマートフォン以外にも、タブレットやタッチパネル搭載のノートPCなどを所有する機会もあるだろう。それを考えると、台数無制限は魅力である。さらに、カスペルスキーとマカフィーの台数無制限は、デバイスを守るというよりは、個人や個人のデータを守るという発想に基づいているともいえる。注目したいライセンス形態である。
一方、特異なライセンス形態は、ソースネクスト(ビットディフェンダー)である。PCのみであり、サポート期間もOSがサポートするまでとなっている。PCを1台しか所有していない、という環境であれば、費用を抑えることができる。その後の更新料がかからないのも魅力である。しかし、今後、PCのみという環境はあまり考えにくい。上述のように、モバイルデバイスの普及が進めば、これ1本ではすまなくなってくるであろう。安さも魅力だが、そのあたりも考慮したい。ライセンス形態は、自身の所有するデバイスの環境によっても変わってくる。ポイントは、将来を見据えた選択をするといった点だろう。
さて、長きにわたりセキュリティソフトを見てきた。昨今のセキュリティ対策の重要性は以前のどの時期にも増しているように思う。金銭や個人情報など直接的な被害の報道も増えてきている。ここで示したのはあくまで、ひとつの指標を筆者が示したに過ぎない。さらに、PCだけ守ればよいというセキュリティ対策の形も変わりつつある。ユーザー個別の環境や考え方によってどのセキュリティソフトを使うかは異なってくるだろうが、個々のユーザーレベルで大切な情報を守るための対策を練ることが求められる。