米アップルのタブレット端末「iPad mini」の携帯回線対応版「iPad mini Wi-Fi+Cellular」(以下Cellular)モデルがついに発売され、同端末で利用できるLTE通信に注目されている。今回は、KDDI(au)版のCellularモデルを使って、iPad miniの通信機能、とりわけLTE通信の使い勝手について解説していきたい。
幅広い周波数に対応
iPad miniのCellularモデルは、無線LAN通信に加えて、携帯回線を使ったデータ通信が利用できる点が最大の特徴だ。音声通話は利用できないが、提供キャリアのエリア内であればデータ通信を利用することができる。
Cellularモデルの場合、発売される国によって「A1454」と「A1455」という2種類のモデルが用意されている。違いは、対応している携帯回線が異なるという点のみで、スペック上の違いはほかにない。国によって携帯が利用している周波数帯が異なるため、各国の状況をカバーするため複数のモデルが用意されている。
iPad miniの前に日本国内で発売されたiPhone 5でも同様で「GSMモデルA1428」「CDMAモデルA1429」「GSMモデルA1429」という3モデルに分けられている。日本の場合、CDMA方式を使うKDDI(au)とGSM(W-CDMA)方式のソフトバンクがiPhone 5を扱っており、CDMAモデルA1429とGSMモデルA1429が販売されている、ということになる。
本題のiPad mini Cellularは、A1454とA1455という2モデルのうち、日本向けはA1455となる。A1455は、GSM、W-CDMA、CDMA2000、LTE(FDD-LTE)に対応しており、iPhone 5では分かれていたGSMモデルとCDMAモデルが統合された形の製品となる。そのため、今回販売を行っているauもソフトバンクも、全く同じ製品が提供されている、ということだ。
対応する周波数帯は、CDMA2000 EV-DO Rev.A/Bが800/1900/2100MHz、GSM/EDGEが850/900/1800/1900/2100MHz、W-CDMA/HSPA+/DC-HSDPA850/900/1900/2100MHz、LTEがバンド1(2100MHz)/3(1800MHz)/5(850MHz)/13(750MHz)/25(1900MHz)。
このうち、LTEのバンド1は、日本の3社が使う周波数(国内では2GHz帯という表記が多い)、3はイー・モバイルや欧州の一部、香港などで使われ、5は米国、韓国、イスラエルで、13、25は米国で使われている。
なお、ハードウェア上は対応している周波数がほかにもある可能性はあるが、現時点で公式に発表されているのはこの周波数帯だ。
今回国内で提供されるA1455は、キャリアの選択画面で手動検索をすると、イー・モバイル、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの4者が表示される。「SIMロックが解除できれば」自由度の高い製品と言えるだろう。
左はソフトバンク版のiPad miniで手動検索したところ。au版はLTE圏内だと「キャリア」が表示され、「手動選択」のオンオフができる。ただし、ソフトバンク版のように検索結果を見ることができなかった |
もう1つのA1454は、GSM/W-CDMA/LTEに対応するモデルだが、CDMA2000が非対応なうえ、LTEで利用している周波数帯が異なっている。LTEの対応周波数帯は、バンド4/17の2種類のみだ。バンド4とは、米国AT&Tなどが採用するAWSとも呼ばれる帯域で、上りが1700MHz帯、下りが2100MHz帯という特殊なバンド。ほかにカナダや南米の一部でも使われている。もう1つのバンド17もAT&Tが使用している700MHz帯で、要は、A1454はほぼ北米のためのモデルといえる。
こうした違いのため、例えば海外でiPad mini Cellular(SIMロックフリー版)を購入する場合、A1454を選ぶと日本ではLTEが利用できない。A1455だと、日本ではそのまま利用できるが、米国ではAT&Tの回線でLTEが利用できない。また、いずれのモデルを選んでも、日本では、auの800MHz帯・1.5GHz帯のLTEは利用できない、ということになる。
iPad miniを無線LANルーターとして活用する
さて、ここからはLTE通信について解説していこう。auは、iOS端末向けにバンド1の2GHz(2100MHz)帯を使った「4G LTE」サービスを提供している。Android向けには800MHz帯(バンド18)や1.5GHz帯(バンド11)を使った4G LTEも提供しているが、iPad miniが対応するのはバンド1のみだ。