カタログスペックだけでは無い、BenQ液晶の性能
REGIONAL MEDIA MEETING 2012, SINGAPOREでは、BenQ本社のIT Display Product Product Management Dept, SpecialistであるScread Liao氏ら、同社の技術系担当者から直接、同社のゲーミングディスプレイの詳細な説明を聞くことができた。ゲーミングディスプレイの技術的なトレンドは、近年ではステレオ3Dによる立体視体験と、120Hzパネルが主役であった。これからのゲーミングディスプレイでは何がトレンドになると考えているのかも話を伺っている。
BenQ本社のIT Display Product Product Management Dept, SpecialistであるScread Liao氏 |
ベンキュージャパンのマーティン・モーレ社長。「ゲーミングディスプレイはBenQにとって非常に重要なビジネスだ」と強調 |
まず、スピードの追及は引き続き進めていくのだそうだ。液晶の"スピード"というと、様々な要素が影響するが、単純な液晶の応答速度においては、新製品であるXL2420Tは2msであるし、XL2411Tは1msを実現している。一方で、リフレッシュレートは120Hzを達成しているが、これは、多くのゲーマーからの意見を反映させるとベストな性能であり、これ以上速くすることは実使用上ではそれほど意味のないことなのだそうだ。
なお、スピードという観点では、応答速度やリフレッシュレートといった単純なカタログ値で言えば、同社のXL2420TやXL2411Tと同等の液晶ディスプレイは他にも存在する。また、両機ともTN方式の液晶パネルを採用しているので、応答速度のカタログ値を稼ぐことも、他の方式よりは比較的簡単に実現することができるだろう。
しかしながら、今回の説明会のショウケースで見ることができたXL2411Tの実機や、日本国内でも既に発売中のXL2420Tを実際に見てもらえると実感できるのだが、カタログ値以上に同社のゲーミングディスプレイはゲーム画面が"ヌルヌル"と動くことが確認できる。プロゲーマーの世界では既にCRTでないと勝てないという状況は改善しており、その状況を作り上げているのが同社のゲーミングディスプレイだ。カタログ値だけではない同社の特別な性能が盛り込まれていると考えられる。
この違いの要因はいくつかあるのだが、いくつか話を伺うことができたポイントとしては、同社のゲーミングディスプレイのOSD設定で適用できる、インスタントモードの存在が挙げられる。通常の液晶ディスプレイに入力信号のラグ(遅延)はつきものだが、同モードは、ディスプレイ側によるIC内でのプロセスを微調整するもので、いわゆるスルーモード的な機能だとされる。オン/オフで実質表示遅延が1フレームほど変わるという効果があるそうだ。
また同じ120Hzでも、色味や輝度など、よりゲームユーザ向けにチューニングされた機能(同社独自のBlack equalizer、ディスプレイモード、ゲームモード、Switchなどの機能)が適用されていることで、よりスムーズな描画が得られているような体験が得られるという話も聞けた。ほか、スケーリングの内部処理の優秀さも、XLシリーズと他製品との差として大きな要因になっているようだ。XL2420Tでの話として、アスペクト比固定のスケーリング時は、通常は処理ラグが発生するはずなのだが、ハードコアゲーマーレベルのゲームプレイにも支障が無いほど、この遅延が極めて小さく抑えられているとのことだ。
BenQのXLシリーズは、XL2420Tであれば4~5万円程度の実売価格で流通しているが、これよりも安い、ゲーミングディスプレイをうたう製品は市場にあふれている。例えばスペックがカタログ上同じだからとか、決して良いイメージがもたれていない"TN"方式を採用しているから、といった理由で、XLシリーズを敬遠するのはちょっと勿体無い。スペックだけでは見えてこない部分もあるので、実機を確認してから判断をするべきだといえるだろう。
なお、BenQでは、こういったゲーミングディスプレイの開発は、プロゲーマーの意見をきめ細かく反映させることで進めているという。さらに社内ゲーマーも抱える体制で開発しているそうだ。最適なリフレッシュレートの採用や各種設定チューニングなどはその成果物だ。パネルやIC以外の部分でも、例えば液晶スタンドの設計といった部分でも、ゲーマーの実際の意見を反映した開発がされており、OSDの設定項目なども、e-Sportsで実際に利用されるものが多く盛り込まれているという、製品トータルでのゲーマー向けの特徴がある。
ほか、ゲーミングディスプレイのトレンドとして、液晶ディスプレイはPCゲームを遊ぶ際にPCに繋ぐものというイメージだが、今後は、いわゆるコンソールゲーム機への接続も視野にいれた製品開発の目標を持っているという。これは、次世代のプレイステーションやXboxといったコンソールマシンを見据えたものだ。そういった製品では、応答速度やリフレッシュレートといった基本的な性能はPC向けと統一されているものの、例えばマルチメディア対応のIOポートや、スピーカの内蔵が重要であるとか、リモコンが必須であるといった、PC向けとは異なる需要があり、そのままの現行製品の流れでは対応できないため、新規開発が必要になる。
BenQの液晶ディスプレイは、まずはハードコアゲーマーをターゲットとしており、これはコンソールゲーム機向けでも変わらない。同社では、次世代のコンソールマシンでは、ハードコアゲーマーが通常の液晶テレビでは満足できないポイントが複数出てくるだろうと予想している。その例として、まずは、そもそものサイズの問題で、主用途から24インチ以上が主流の影響テレビでは視野の問題で不便があることが予想される。映像やコントローラの入力経路の問題で入力ラグが起こるデメリットもある。パネル性能の特性の違いから残像の問題もありえるだろう。
同社では、液晶ディスプレイを変えるだけで、勝てなかったものが勝てるようになる、という認識はPCゲーマー層だけでなく、次世代環境ではコンソールゲーマー層にもより広がり、カジュアルなゲームでは液晶テレビで十分だとしても、コンソールであってもハードコアゲーマーにとっては、専用のゲーミングディスプレイを用意する必要性は高まると見ている。カジュアルゲーマーは3万円から5万円はするようなゲーミング専用ディスプレイに手を出す可能性は低いが、ハードコアゲーマー層であれば需要は必ず出てくるとなれば、PC向けで培ったXLシリーズのような特別なゲーミングディスプレイのコンソール向け版の新規開発に意味が出てくると考えているようだ。