――今回50周年作品を作るにあたり、たとえば『科学忍者隊ガッチャマン』をリメイクするとか、「タイムボカンシリーズ」の新作を作るとか、さまざまな選択肢があったと思うのですが、あえて完全オリジナルの新作を作ることになったのは?
笹川氏「とにかく、これまでにないものを作ってみたかったんですよ。今までにないものだけど、どこかで観たことがある、みたいな。たとえば、タツノコの作品なんだから、『ヤッターマン』のゾロメカみたいなのは、お客さんの立場で考えるとやっぱり観たいじゃないですか。だから、そのあたりの要素は残しつつ、これまでのシリーズの延長ではない完全新作という形で作ることにしました」
――やはりそのあたりの要素はファンとしては楽しみにしたいところですね
笹川氏「今回、小さなメカが集まって大きなロボットになるような描写もあるんですけど、これまでなら玩具メーカーさんの注文にあわせて、ちゃんと変形や合体ができるようにしてきたんです。それこそ大河原さんにお願いして。でも、今回はそういったしがらみがないので、完全に無視しています(笑)。ウルトラマンの変身シーンのように、ピカって光ったら変形していたみたいな感じで」
――そのあたりはいつもより自由に作っているわけですね。ちなみに、大河原さんがメカデザインを手掛けるということは最初から決まっていたのですか?
笹川氏「はい、最初から決まっていました。とにかく、大河原さんに協力していただかないと始まりませんから(笑)」
大河原氏「この作品は、笹川さんと私がタッグを組んだら面白いものができるんじゃないか、というところから始まっていて、まずタツノコさんのほうで作品世界を考えて、それにあわせてメカをデザインしていくという感じだったのですが、最初に描いたのは"ロボニー"ですね。ロバのロボットなんですけど、だいたいロバなんて見た目が決まっているから、そもそもカッコよくなんか描けないわけですよ。それで普通のロバを描いたら、もっと馬が笑っているような感じにしろとか、いろいろと漫画家的なテイストを笹川さんが言ってきて……。それをまとめるのがいつも大変なんですけど(笑)。それから、敵をカッコよくだとか、味方が合体するだとか、いろいろな話を聞きまして……」
――かなりムチャなオファーもあったのですか?
大河原氏「どんなムチャな要求でも、だいたいは時間さえあれば描けるもんなんですよ。結局、そのあたりはスケジュールだけが問題になりますね。それに、笹川監督とはずっと一緒に作品をやってきて、信頼感もあったので、僕がそれほど苦労して生み出さなくても作品のほうで面白くしてくれるだろうって(笑)。それぐらいの気持ちでデザインしました」
――今回は30分のOVAですが、それでもかなりの数をデザインなさっているんじゃないですか?
大河原氏「たしかに数は多いですけど、悩んで搾り出してくるようなメカではないので、適当に遊びながら描いてます(笑)」
――完璧な変形も考慮しなくていいというお話ですしね
大河原氏「それもありますが、『タイムボカンシリーズ』をやっているときも、全然苦労はしなかったですね。あのシリーズに関しては、本当に遊びながらデザインしたようなものなので。でも、そのほうがかえって、皆さんも楽しんでいただけるのではないかと思います」
笹川氏「(ヤッターワンの模型を見ながら)でも、こういうのは大変でしょ。ゾロメカはまだしも」
大河原氏「ゾロメカは本当に鼻歌まじりでしたね。でも、『タイムボカンシリーズ』の場合はそれほど複雑な変形をさせず、普通とはちがったやり方でガラッと印象を変えるような手法を使っていたので、あまり苦労はしていないんですよ」