GPUもクラウドの世界へ

Kepler 2の新機能だけでも十分大きなトピックなのだが、それに加えて今回大きくクローズアップされていたのが「クラウド対応」だ。「BYOD (Bring your own devices)」というキーワードがあるが、最近は会社の業務においてもプライベートで利用している携帯電話やタブレット、PCを仕事に持ち込むケースが増えており、「自分の使い慣れたデバイスをビジネス現場で活用する」といった場面を見かけることが多い。たいていの場合、こうしたデバイスは特別な機能や性能を持ち合わせていない汎用製品なのだが、これらを用いてGPUの性能をフルに使ったアプリケーションを活用しようというのが「NVIDIA VGX」となる。

そして今回Keplerで新たに発表された機能が「クラウド対応」だ。「BYOD (Bring your own devices)」のキーワードにあるように、自分の好きなデバイスをクラウドに接続して、そこから自由にKepler GPUの機能を利用できるようになるというものだ。例えばNVIDIA GPUを搭載していないiPadや薄型ノートPCのようなデバイスでも、この機能を使うことでワークステーション並みの画像処理や、最新GPUによる迫力あるゲームが楽しめるようになる

これを実現するのが「NVIDIA VGX」と呼ばれる機能。すべてのKepler世代のGPUでサポートされている。単なるVDI (Virtual Desktop Infrastructure)によるデスクトップの仮想化だけではなく、サーバで実行される個々のVDI上に仮想化されたGPUの処理リソースをマッピングし、あたかも手元のデスクトップ環境で見ているかのようにGPU環境を利用できる

「メンテナンスが容易」「リソースの効率利用が可能」という点で「VDI (Virtual Desktop Infrastructure)」の仕組みが注目を集めることが多いが、これをGPU利用に拡張したのがVGXといえる。VDIにおける仮想デスクトップはサーバ上で動作しており、これをフロントとなるユーザーのマシンと連携して動作させる。クライアントPCが「シン・クライアント」的に動作するものだと考えればいいだろう。VGXのケースでは、この仮想デスクトップをハイパーバイザ上でOSごとホスティングする仮想マシンの形態をとり、この仮想マシンのドライバから、仮想的にプールされたGPUリソースを呼び出し、各仮想マシンに割り当てる。このVGXはTeslaシリーズだけでなく、KeplerアーキテクチャのものであればGeForceでも対応できるという。

デモで紹介されたケースでは、Citrix XenServerで仮想マシン環境を動かし、これをクライアント側に導入したCitrix Receiverでリモート操作する形態をとっている。例えばiPad上でCitrix Receiverアプリから仮想デスクトップを呼び出し、GPUによるレイトレーシング処理を行ったり、あるいはMacBook Airのような薄型ノートPCからMayaによるアニメーション作成を行ったりといった具合だ。壇上ではILM (Industrial Light & Magic)のGrady Cofer氏が登場し、現在全米公開中の「The Avenger」のVGXを使った製作風景を紹介している。

VGXの応用例。iPad上でCitrix Receiverを起動し、この仮想デスクトップ環境でレイトレーシング処理を行っている。タッチ操作との組み合わせがシュールだ

こんどはMacBook Air上でCitrix Receiverを起動し、Mayaを使ってのCGアニメーション作成を行っているところ。画面は現在米国で公開中の「The Avengers」の1シーン。ハルクとアイアンマンがいることが確認できる

数ある著名映画の映像美術で名高いILM (Industrial Light & Magic)では、このシステムを利用して100人以上が同時に映像作成に携わっているという。さらに、この100台のVGX環境が1台のラックサーバを通して提供可能だと説明する

VGX提供にあたっては、複数のサーバベンダーとの協業を発表。そのうちの1社であるCisco Systemsでは、Cisco UCSでのVGX対応を行うという