好調な3M戦略
現在のKDDIでは、「3M戦略」を推進しており、前期はその初期段階と位置づける。今年2月から受け付け開始した「auスマートバリュー」は、3月末まで出会う契約数は66万、世帯数は44万となり、「非常にいい結果」としている。「auひかり」以外の提携事業者も対象となり、全体の55%が提携事業者の契約だったという。auスマートバリューは、携帯と固定の契約で毎月の利用料を割り引くというものだが、契約者全体に対してauの新規契約者が20%を超えれば損益分岐点に達し、すでに3月末の段階で20%を超えた。しかも新規契約のうちMNPが約60%だったという。
スマートフォンを利用していないユーザーのうち、「毎月の利用料金が高くなりそう」という理由も多く、スマートフォンを利用したいが利用料金に不安があるユーザーに対するニーズをつかんだ、と田中社長はしている。
固定側の損益分岐点は新規ユーザーの割合が12%で、こちらは大幅に上回る水準で推移 している。auひかりの新規受付数は前期比で倍増となる21万に達し、「このサービスがマーケットによく受け入れられた」と田中社長。
スマートフォン以降の障壁となっている利用料金の高さに対する不安を軽減する役割を担っている。実際、スマートバリューユーザーのARPUは400円のマイナスとなっている |
固定の損益分岐点も超え、auひかりの新規契約数も拡大 |
auスマートパスは、3月1日の開始以来、1カ月で50万契約を突破。「記憶が正しければ、こんなに短期間で有料サービスが伸びることはなかった」と田中社長が言うほど、ユーザー数が早期に拡大。コンテンツサービスの契約は「若年層に偏る」が、幅広い年齢層が契約しているのも特徴で、「さらなる拡大に期待が持てる」という。現在、スマートパスはAndroid端末向けのみだが、今後「iPhone向けにも提供できるように検討を進める」考えだ。
3M戦略を推進、LTEは前倒しでサービス開始へ
今期は、これらの3M戦略をさらに本格化させる。3M戦略を進めることで競争優位性を確保することが目的で、3G、WiMAX、無線LAN、固定といったマルチネットワークで高速で快適な通信環境を提供するとともに、コスト低減を両立し、「新たな時代における事業成長の戦略」としたい考えだ。
auでは前期の211万の水準を維持し、通期で210万の純増を目指す。今年は旧800MHz帯が停波する関係で、旧端末の利用者が移行する必要があり、その解約が発生するほか、今後の競争激化を見込んだため「少し保守的」な数値になった。
3M戦略を本格化。通信売上と付加価値売上の最大化を目指し、それにともなってコストの低減も目指す |
純増数は前期同等だが、それでも高水準を維持する。スマートフォンの販売比率は7割に、FTTHの純増数は70%増まで拡大を目指す |
auスマートバリューを利用するau契約数を244万増の310万まで、同世帯数を111万増の155万まで拡大する。auユーザーの世帯数は約1,600万、FTTH/CATVの利用世帯は約1,000万だが、現在は両者を使う世帯が「300万ぐらいしかない」ため、世帯カバー率をさらに広げて拡大を目指す。世帯カバー率は11年9月の約40%から12年3月には73%まで広げており、今後も拡大していく。