さらにTegra 3では、「PRISM Display Technology」「DirectTouch」の2つの技術を用意。モバイル端末で最も消費電力が高いのは、プロセッサではなくディスプレイで、PRISM Display Technologyは液晶の消費電力を低減するための技術だ。液晶の消費電力を下げるにはバックライトの明るさを下げるのが最も効果的だが、そうすると画面の表示が暗くなってしまう。それに対してTegra 3では、ピクセルの1つ1つを分析して、色を明るい色に塗り替え、バックライトを暗くしても同じ明るさを維持する、という技術だ。各ピクセルに対して60fpsのスピードで処理を行い、バックライトの消費電力を最大40%削減できるそうだ。

DirectTouchは、タッチパネルの消費電力を削減するソリューションだ。タッチパネルでは、専用のコントローラーを用意してタッチした位置や精度を処理するが、それをTegra 3に内蔵することで、コントローラーを排除。コントローラーに付随した通信回路や電圧制御などの部材が削減できるため、消費電力が低減する。さらにTegra 3のパフォーマンスを活用し、サンプル周波数や精度が向上し、よりレスポンスがよくなるという効果もあるという。

画質を維持しながら消費電力を削減できる

タッチパネル用の専用コントローラーが不要になるDirectTouch

通常のタッチパネルでは、サンプル周波数が100程度で、10本指を認識させると、サンプル周波数も低下する

DirectTouchでは、サンプル周波数が200を超え、10本指を認識した状態でも低下しにくい

いずれもデバイスメーカーとの協業が必要な部分で、Tegra 3を導入したからと言って、単純にこれらの技術が利用できるわけではないが、NVIDIAではこうした関連メーカーと協力して開発を進めていく。

DirectTouchやLTEモデムではパートナーとの協力で製品開発を行う

「高性能なチップだけを提供してもユーザーエクスペリエンスは提供できないので、エコシステムとして提供する」(同)ことがNVIDIAのスタンスで、クアッドコアを活用するためにソフトウェアベンダーとも協力。Tegra 3で性能向上した12コアのGPUも活用して開発できるようにしていく。例えばゲームでは、家庭用ゲームの性能をそのまま移植した「Sonic the Hedgehog 4: Episode II」のようなゲームだけでなく、画像編集の「Nik Snapseed」なども画像・マルチメディア系のアプリも、高速に動作し、作業の度にユーザーを待たせることがなく、高度な処理ができるようになっている。

Tegra 3に対応したゲーム

これはセガのSonic the Hedgehog 4: Episode II

Golden Arrow THDでは、高解像度のテクスチャに加え、HDRライティング技術、ソフトシャドウなどの技術を投入

Tegra 3では、ライティングや水の表現など、これまで以上二ゲームでの表現力が向上する

Tegra 3に対応した通常のアプリも

Nik Snapseedでは、画像処理をリアルタイムで再現できる

GPUは12コアに拡張されており3倍のパフォーマンスを実現。CPUの処理を一部オフロードしているほか、将来的にはGPGPUと同様の作業を実現するという

テレビにつないで大画面に出力できるほか、3D立体視も可能。そのほか、ゲームコントローラーはPS3、Wii、Xboxといった家庭用ゲーム機のものがそのまま利用できる

Tegra 3のパフォーマンスを生かしたリモートデスクトップツール「Splashtop」。リモートデスクトップとしては珍しくWindowsのAeroが有効になっているほか、ゲームも実行可能

こうした高性能と消費電力の削減によって、Tegra 3はタブレット、スマートフォン市場での拡大を目指すが、大きな課題となるのがモデムチップだ。Tegra 3は現在、モデムチップとして昨年買収したIceraの3Gモデムがあり、LTEモデムとしてルネサスやGCTと協力する。今後、IceraのLTEモデムを提供していくほか、モデムの1チップ化も図っていく計画。同社は、単なる性能向上だけでなく、各種ベンダーと協力してエコシステムを構築。そのパフォーマンスを使ってユーザーにどんなエクスペリエンスを提供できるか、という点にも注力していきたい考えだ。

(記事提供: AndroWire編集部)