今年1月25日の障害ではパケット交換機が原因だったため、交換機の能力向上を目指し、2月19日までに現状の交換機201台の再点検を実施。それを踏まえて、4月末までに新型パケット交換機40台を増設する。処理能力向上も8月中旬までに実施していく。
この時の障害は新型のパケット交換機を導入した際に発生。新型の設計で「トラフィック(同時接続数)にばかり目を奪われていた」(山田社長)が、スマートフォンが接続を維持するための制御信号が見積もりより多く、「制御信号を甘く見ていた」(同)ことが原因で障害が発生した。そのためドコモでは、パケット交換機が処理できる同時接続数と制御信号数の最大リソースに対し、80%の使用率に達したら設備を増強するという新基準を設ける。現在80%に達しているパケット交換機40台に対して、14台の新型パケット交換機を増設し、使用率を低減する。これを2月25日から3月末までに実施する。さらに制御信号数の使用率が80%に近づいている132台に対しては、4月以降に新型26台を増設する。
現状でも80%は超えていないため、「安定して運用できる状態」(同)ではあるが、新型の増設でさらなる余裕を狙い、まず2月25日に東京23区内で2台の新型交換機を導入する。同時期に、スペイン・バルセロナで世界的なモバイル向けのベント「Mobile World Congress 2012」が開催され、当初は山田社長も基調講演に参加する予定だったが、この交換機増設のために山田社長は参加を取りやめている。
また、8月中旬までにパケット交換機のさらなる処理能力の向上を図っていく。スマートフォンの接続・切断手順の見直しを実施するほか、複数のアプリが1回の接続で同時に通信を行うといった処理ができないかの検討も行う。さらにアプリベンダー約700社に対し、「モバイルネットワークに配慮したアプリ設計をするよう協力をお願い」(同)しているほか、グーグルや海外キャリア、業界団体のGSMAとも協力し、モバイル向けのアプリの設計に関して対策を検討していく。
すでにグーグルとの協議は開始しているとのことで、「まずは現状を理解してもらっているところ」(ドコモ・辻村清行副社長)だが、今後取り組みを本格化する。最終的には、モバイル向けアプリの設計に関する何らかの指針を世界的に策定していきたい考えだ。
そのほか、障害に対応するための監視・措置体制の強化を図っており、監視部門と開発部門、さらにネットワーク機器ベンダーをホットラインで結び、障害時に24時間で対応できる体制も整えたことで、障害発生時に早急に原因をつかみ、対応できるようにしている。また、NTTグループ内のIP関連の技術者を受け入れるなど、技術力のさらなる向上も狙っている。
山田社長は、これまでの対策、再点検によって、「現状の顧客数であれば安定的に運用できる状態だと考えている」とコメント。メールアドレスの取り違えやこれまでと同じ原因での障害は「発生しない」(同)というスタンスで、今後の対策によって、スマートフォンのユーザー数がさらに増加しても対応できるようにネットワークの信頼性向上を図っていく。
「安心安全のドコモと(顧客に)期待されているのに障害を起こしてしまった。全社一丸となって、スマートフォン5,000万台に耐えうるネットワーク基盤の高度化を実現するよう、取り組みを着実に実行したい」と山田社長は意気込んでいる。
(記事提供: AndroWire編集部)