レコードやCDの頃から集めてきた大量の音楽資産をiTunesライブラリで管理している音楽好きにとって、iTunes Matchはうれしいサービスである。8GBのiPod touchからでも、音楽資産全体に直接アクセスできるのだ。一度iTunes Matchを体験すると、iPodやiPhoneをパソコンに接続して音楽を転送する作業に戻れなくなる。

しかも、おそらく音楽ライブラリ全体が時代に合わせてアップグレードされることになるはずだ。iTunes Music Storeの頃は128kbpsだった音楽ファイルが、今や256kbpsである。先日Googleが正式サービスを開始したGoogle Musicの音楽ファイルは320kbpsのMP3だ。iTunesもこれに追随すれば、iTunes Matchユーザーの音楽資産は自動的に320kbpsにアップグレードされるだろう。過去に、レコードで持っていた作品をCDやデジタル版で買い直したり、CDからより高いビットレートで取り込み直した経験などを思い出すと、それだけで年間24.99ドルの価値を感じる。もうCDから取り込み直す必要がないということは、手持ちのCDを処分できるということだ(ウチにはもうCD専用プレーヤーがないし……)。

違法に入手した音楽もアップグレードの対象になり得るのは、少なからず議論を呼びそうだ。だが個人的には、それで違法ファイル交換が再び増加するとは思わない。面倒だし、いま欧米には広大な音楽に自由にアクセスできる手頃なサービスがいくつもある。筆者はストリーミングサービスも契約していて、それとiTunes Matchでいつでもどこからでも自分の音楽ライブラリと2,000万曲近い音楽にアクセスできる。おかげで最近は音楽を買うことが少なくなったが、代わりに音楽を楽しむ方法(サービス)にお金を投じている。音楽とのつきあい方が変わったとは感じるが、Facebook世代にはこれが自然なのだろう。

30年以上の歴史を持つ筆者の音楽コレクションは30,000曲を超えるので、すべての音楽のiTunesライブラリと、iTunes Matchとの同期用の厳選ライブラリを切り替えながら使っている

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