約290倍の成長ホルモンが分泌! ダイエットやアンチエイジングなど多数の効果

――正しく加圧トレーニングをおこなった場合の効果をお教えください。

「まず筋力アップ。私や東京大学の石井直方教授などの研究でわかっていることをお話ししますと、血流を止めず適切に制限すると腕や脚に血液が滞留します。すると行き場を失った血液がこれまで行かなかったところまで血液がいき渡る。このような状態でトレーニングをすると軽い負荷でも高い効果が上がることがわかっています。つまり、つらい思いをしないで効率的に筋力がアップするのです。こうしたことからボディビルダーをはじめスポーツ選手・愛好家、日本の大学や企業からも高い支持を受けています」

――加圧トレーニングをすることによって成長ホルモンが多く分泌されるとのことですが。

「はい、通常の約290倍の成長ホルモンが分泌されることが研究でわかっています。この成長ホルモンの働きにより、太りにくい体になるというダイエット効果や、骨折やねんざ、肉離れから回復しやすくなるリハビリ効果、さらにハリのある肌を維持できるアンチエイジング効果があると考えられています」

――血流をコントロールするということになると、血管にも効果があるのでは?

「その通りです。加圧、除圧を繰り返すことにより血管が鍛えられるため血行促進がよくなり冷え性や肩こりが治ったり、新しい毛細血管が増えたりといった効果もあります」

米国、ロシア・中国・スリランカでもプロジェクト進行中

――先ほど東大病院で研究が進められているとおっしゃっていましたが、どのような研究なのでしょう?

「加圧トレーニングを使って循環器疾患など患者さんのリハビリについて臨床で効果を検討しています。とりわけ高齢者の方にとっては少ない運動量で筋力が戻り、また成長ホルモンが活発に分泌されることから、介護予防に貢献するものと考えられています。将来的には宇宙への応用も目指しているんですよ」

――宇宙といえばロシア宇宙庁との共同研究も進んでいるようですね。

「宇宙はご存知の通り無重力の世界のため、1日に約1%の筋肉が失われていきます。そこで国際宇宙ステーションに滞在する人は地球に帰還するまでに、これまで毎日2時間半のトレーニングが必要でした。ところが、加圧トレーニングをおこなえば1日約30分と大幅に短縮することが可能になります。ここに目をつけたロシア宇宙庁が共同研究をおこないたいということになったんです」

――なるほど。加圧トレーニングなら短時間のトレーニングでも長時間トレーニングするのと同じ効果になるわけですね。ほかにもロシア以外でずいぶんと海外で展開されているようですね。

「2008年から海外に進出する機会が増えています。まずはアメリカ。スポーツ医学分野における世界最大の学術団体である米国スポーツ医学会(ACSM)とパートナーシップを締結し、国際的な加圧インストラクター養成講習制度の確立や、加圧トレーニング専門の研究分科会の設立などを進めています。eラーニングでインストラクターを養成する予定もあります。それ以外では、最近は中国と共同研究を軸に積極的に交流しているんですよ」

――中国とはどんな交流を進めておられるんですか?

「中国国家体育総局と共同研究をはじめています。ずばり狙いはオリンピック選手の育成・強化です。加圧トレーニングによって、より中国の金メダルの獲得数が増えるかもしれません(笑)。本当は日本のスポーツ界にもっと取り入れるべきだと思っていますけどね。それともうひとつ、中国では吉林大学と共同研究プロジェクトを組み遺伝子レベルの研究も進めています」

――それはどういったものですか?

「吉林大学に加圧療法研究センターが設立され、ヤギを使って骨幹細胞に対する研究および糖尿病患者の臨床研究をおこなう予定です。日本では研究にマウス程度しか使えないのですが、中国ではヤギを使っているのでどのような結果が出るか非常に楽しみにしています」

――また、加圧専門の大学の設立も進めておられるそうですね。

「ええ、スリランカで『加圧国際大学(KAATSU International University of Sri Lanka)』を設立することが決まっており現在建築中です。加圧テクノロジー学部内に加圧テクノロジー科、加圧トレーニング科、基礎科学科、臨床科学科、技術工学科を擁し、大学院も併設します。国際という名の通り、全世界から学生が集まる予定です」