――子育てに関してはいかがですか?

SABU「自分が子供の頃は普通に廊下に立たされてたり、先生からビンタとかされたりしてましたよね。でも、そこから反骨精神が自然に芽生えていったと思うんです。それに比べて、今の子供たちはどこで『根性』を身につけるのか心配なところは多少ありますね。優しくて周りから好かれるのもいいけど、いざ勝負となったらやっぱり勝ってほしい。でも、だからといって小さいうちから卑怯でこすっからい人間にはなって欲しくないし……なかなか難しいです」

――強引かもしれませんが、映画製作と子育てって似ているものですか?

SABU「どうでしょう……映画は完成しましたけど、子供の方はまだ完成してないですからね(笑)。ただ、たくさんある道の中で、子供が好きなもの、関心のあるものを遠くに置いて導くことはしてあげたい。これから日本がどうなっていくのか分かりませんし、それがちょっと心配ではありますが、とにかく英語は大事だと想うので、海外の映画祭なんかには積極的に息子を連れていこうかなって思っています。まぁ、俺を越えようと思ったらなかなか大変だから苦労すると思いますけど(笑)」

映画『うさぎドロップ』は、8月20日より渋谷シネクイント、新宿ピカデリーほかで全国順次公開予定

――では最後に、この映画の見どころをお願いします。

SABU「この作品のメッセージはラストシーンのダイキチのセリフに集約されていると思います。当たり前のように思っていたことでも、ふと見方を変えたらそれまで見えていなかったものが見えてくる。ダイキチの場合、りんを引き取ることで自分がこれまでいろいろな人に支えられて生きていたことに気づいたと思うんです。インターネットが普及して、人と人との絆というかつながりが希薄になっていると言われていますが、結局、みんな誰かとつながりたいと思っているんですよ。映像の色づかいはもちろん、自分の今までの作品同様、テンポよく飽きさせないように作ったつもりですので、ぜひ楽しんで下さい」

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自身の作品の骨太さとは異なり、控えめに淡々と語ってくれたSABU監督。表現者としてのこだわりを随所に散りばめながら、人と人とのつながりの温かさと必要性を感じさせる普遍的な物語に仕上がっているところが非常に興味深い。息子さんの話をする時のちょっと照れくさそうな父親の表情がとても印象的だった。