では、『SUPER 8/スーパーエイト』に出てくる子供たちの中だと、自分は誰に似ていると思うかと突っ込むと、こんな答えが返ってきた。
J.J.「誰かひとりを選ぶなら、監督をしている太った子供だね。僕にはジョーみたいな友だちもいたよ。でも、彼らみんなのキャラクターを少しずつ集めたような子供だったかもしれない。何かを撮影し、現像してもらい、一週間後に撮れているものを知るのは楽しかった。さすがに、想像以上にいいものが撮れた、なんてミラクルはなかったけどね」
映画のタイトルになった"SUPER 8"は、1965年にコダック社が発表したカートリッジ式のムービーカメラ。アマチュア時代のスピルバーグやエイブラムスが魅了されたこのアイテムには、デジタルカメラにはない味わいがある。
J.J.「10年前にはすでにハイビジョンがあった。だから、僕の子供たちのホームムービーを見たとしてもまるでその日に撮影されたようにクリアに見えてしまう。時の流れや想像に任せるっていうところがまるでないんだ。ところが、SUPER 8で撮影した映画は、解像度が低くぼやけていて、映像からすべての情報を得ることが出来ない分、神秘性がある。自分の脳が、映像の空白を埋めていくんだ。テクノロジーは、何をやるかというアイデアほど重要じゃない。僕はそう確信している」
想像で情報を埋めていく過程は、『SUPER 8/スーパーエイト』の公開を待ち望む、ファン心理と同じ。J.J.がここまで徹底して情報を隠すのには理由があった。
J.J.「僕にとって、ストーリーのミステリーを維持することは重要なことだ。公開される前に、観客が内容を知り過ぎてしまう、なんてことは避けたい。映画が台無しになるからね。すべては観客に楽しんでもらうためなんだ。キャストやスタッフにも協力してもらったよ。本作を撮影したウェスト・ヴァージニア州のウェアトンは本当に素晴らしい町でね。裏庭で、何週間も撮影させてくれたよ。彼らも、情報が流れないように協力してくれた。ほかにこだわったことは映画のテンポかな。1979年が舞台ということもあり、現代とは違ったスピードで見せたかったんだ。例えば、マイケル・ベイの映画をアビッド(ノンリニア編集システム)で見ると、彼が目まぐるしくカットしていることに気付く。どれだけのカット数があるか、想像できないほどさ。だからこそ、彼の映画は独特の経験を生む。でも、この映画ではアビッドを使わなかった。この時代にはなかったものだしね。本作には僕がスピルバーグ作品を観た際の気持ちと、アイデアを伝えるために必要な要素の両方が上手く融合しているんだよ」
『SUPER 8/スーパーエイト』は、6月24日より全国公開。
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