J.J.「スピルバーグが撮影現場に来た時は楽しかったよ。このプロジェクトは、彼に自分のアイデアやシーンのイメージ、出来上がった脚本を送り、何度も書き直すことで磨かれていった。彼はオーディションやラッシュまでチェックし、気に入ったシーンに至っては、"こうすればもっと良くなる"というフィードバックもくれたんだ。彼はクリエイティブでありながら、サポートを惜しまない映画のプロデューサーだった。彼には助けられたよ。この業界で映画を作っていて、あれは素晴らしいシーンだったねと、偉大な彼に言ってもらうなんて、すごく奇妙な感じがしたけどね(笑)」
映像作家としてスピルバーグに共感するところは何かを聞くと、映画マニアのJ.J.らしく、専門用語飛び交うディープな映画談義が始まった。
J.J.「彼は普通の人が並外れたことを経験するというストーリーを語る傾向がある。そこが好きなんだ。多くのショットをひとつのショットに組み合わせるスタイルも気に入っている。たいていの監督はひとつのショットを撮るとそれで終わりだ。でもスピルバーグは、そのショットの真ん中あたりに来る頃に、何かのクローズアップを見ている仕掛けがある。ストーリーテリングにおいて、彼ほど独創的な見方を出来る人を知らないね」
幼少期のスピルバーグ体験を含む自伝的要素により、思い入れたっぷりの作品となった本作。注意深く観ていると、彼の実体験が随所に盛り込まれていることに気付く。
J.J.「僕も少年時代は、主人公のジョーみたいに、特殊メイクやホラー映画に夢中だった。しょっちゅう、そういった映画をこっそり見に行ったよ。まったく知らない人たちにチケットを買ってもらい、映画館に忍び込んだものさ(笑)。『13日の金曜日』(1980年)が一世を風靡していた頃で、似たような映画が山のようにあった。それを全部観たと思うな。僕はメイクアップに魅せられ、見終わった後、メイクアップ・アーティストに手紙を書いたりした。そうやって、当時大好きだった『スキャナーズ』(1981年)を手掛けたディック・スミスと知り合ったんだ。あの映画はスラッシャーじゃない。登場人物には芸術的な特殊メイクが施されていたんだよ」……続きを読む。