レースにおける「1/1000秒」が持つ意味
続いて、往年の名レーサーである中嶋悟氏の実息にして、かつてはF1ドライバー、現在はトヨタドライバーとして、フォーミュラ・ニッポンやスーパーGTで活躍する中嶋一貴選手がステージ上に上がると、ひときわ大きな歓声が上がった。それもそのはず、中嶋選手は6月4日と5日に九州のオートポリスサーキットで行われたフォーミュラ・ニッポンに参戦し、2戦目にして見事に初優勝を遂げ、その興奮冷めやらぬ中の登場となったからだ。
フォーミュラ・ニッポンはF1に次ぐフォーミュラカーレースとされ、レーサーは1/1000秒の感覚で戦っているといわれる。果たして感覚的に実感できるものなのだろうか。
「グランプリのスタート順位を決める予選では、1/1000秒の差で順位がひとつ下がってしまいます。わずか1/1000秒とはいえ、それがもたらす結果はそれほど大きい。だから、もし1秒遅かったりすると、もう大事件といってもいいですね。本来自分が居るべき所から、最後尾に落ちてしまう可能性だってある。
慣れてくると、1周あたり0.1秒早いか遅いかも感覚的に分かってきます。体内時計で(笑)。調子が良いときは、今、コーナーで何秒縮めたとか、ロスしたな、とか分かるんです」(中嶋選手)
最高速では時速300kmに達するレースの世界。1秒間で約83mもの距離を進んでしまうことを考えれば、その時間の持つ意味がいかに過酷なものか想像できる。やはり、普段から常に時間を気にする習慣が身についているのだろうか。
「レース中は分きざみでスケジュールが進むので、時計が手放せません。というより、時計がないと落ち着かないですね。ピットのガレージも時計に囲まれています。どこからでも見える場所に時計があるんです。ドライバーの個室にも時計があるし、常に時計とともにある。レーシングドライバーにとって、時間と時計はとても大切ですね」(中嶋選手) ……中嶋選手が時計を選ぶ基準は?