「Air frame」などで知られるアイウエアブランド・JINS(ジンズ)が、コラボレーションの分野でも真価を発揮している。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんとのコラボや、「EVANGELION × JINS オリジナルメガネセット」の衝撃も記憶に新しい。そしてこの分野におけるエポックメイキングな出来事が、昨年発売された「ONE PIECE LIMITED BY JINS」の大ヒットだ。
人気アニメ『ワンピース』とのコラボレーションで生まれ、JINS最大のヒットを記録した同商品。その"仕掛け人"となったのが、企画の立ち上げに携った香川憲昭氏と、デザインを手がけた北垣内(きたがいと)康文氏。2人とも、JINSを展開するジェイアイエヌのアイウエア事業部に所属している。今回は香川・北垣内両氏にインタビューを行い、商品化の経緯から制作中のエピソード、『ワンピース』に対する思いまで、余すところなく話を聞いた。
ジェイアイエヌ アイウエア事業部副部長の香川憲昭氏(写真右)と、同事業部のデザイナー・北垣内康文氏(同左)。「ONE PIECE LIMITED BY JINS」の"仕掛け人"2人へのインタビューでは、意外な制作秘話が次々飛び出した |
「『ワンピース』とコラボ!? それはすごいですね!」
――昨年、ジェイアイエヌの代表取締役社長・田中仁氏にインタビューした際、『ワンピース』メガネ&サングラスは、「ファミマ・ドットコムさんからお話をいただいたことが発端」と聞きました。
香川 ファミマ・ドットコムさんは、いわゆる「キャラクターもの」の企画販売に非常に長けているんです。その担当者の方から打診されたのがそもそものきっかけ。同時期、(『ワンピース』のアニメ制作を手がける)東映アニメーションさんが、『ワンピース』の関連商品を展開していらっしゃったので、ちょうどいいタイミングでした。
――企画を立ち上げるにあたって、社内の反応はいかがでしたか?
香川 ファミマ・ドットコムのご担当者からお話をいただいた後、オンラインショップの担当者、マーケティングの担当者、デザイナーなどに、ミーティングで打診してみました。すると十中八九、「『ワンピース』とコラボ!? それはすごいですね!」という反応だったんですよ。ヒアリングの段階からこれだけの反応のある企画はそう多くはなく、「すぐにでも話を進めるべきだ!」と直感しました。
――第1弾では"麦わらの一味"全員のメガネとサングラスを発表されました。これは企画が始まった当初から決まっていたのでしょうか?
香川 わりと早い段階でその形に行き着いた記憶があります。最初の時点では、「5人に絞ったほうがいいのでは?」という意見も出ました。ただ、ファンにとってわかりやすいテーマ性を持たせるためにも、やはり「"麦わらの一味"のメガネ&サングラスが勢ぞろい」にするべき、という話になったんです。
ウェブ先行予約の段階でも、多い日で1日7,000本の予約が入ったという「ONE PIECE LIMITED BY JINS」。発売直後には『ワンピース』ファンが多くJINS店舗を訪れ、9人全員のモデルを"大人買い"するファンもいたとか(写真は昨年末の店頭発売時のもの) |
"メガネを持つチョッパー"のイラストに隠された秘密
――コラボメガネ&サングラスの制作で、一番苦労した点は?
香川 じつは制作するにあたって、ルールがあったんです。それは、「メガネまたはサングラスをかけた原画が存在している」ということ。原作者の尾田栄一郎先生は、原画のイメージのこだわりを非常に大切にされています。「商業主義によって世界観が損なわれてはならない」というのは、東映アニメーションさんも徹底されていたんですね。そのルールの下、我々はコミック全巻を読むだけでなく、画集も買い込み、あらゆる画を探しながら、メガネとサングラスをかけたルフィたちの原画を集めました。それをもとにデザインを起こしたんです。
北垣内 コミックにしても、基本的に扉絵の中から探すことしかできないですよね。絵が見つかっても、メガネの細かいデザインまではしっかり描き込まれていないものもあったので、そこからイメージを広げ、ファンにも受け入れてもらえるデザインにするのは難しい作業でした。
――そうした苦労もありつつ、最終的には(メガネかサングラスをかけた)"麦わらの一味"全員の原画を探し当てたわけですね?
香川 ところがチョッパーの原画だけ見つからなかったんです。そこで、東映アニメーションさんからアドバイスもいただきつつ、苦肉の策としてチョッパーのみ、メガネを持たせることにしました(笑)。
北垣内 デザインする時も、やはり原画がなかった分、チョッパーのメガネが一番大変でしたね。