親指シフトだから割り切れたテンキーレス
一般に「親指シフト」と呼んでしまうけれど、このキーボードの入力方式は正確には「NICOLA」(NIhongo nyuryoku COnsortium LAyout)といって、富士通が開発した親指シフト配列を改良した、日本語入力コンソーシアムレイアウトに準拠したキー配列である。
富士通式の親指シフトからの主な改良点は「ぱぴぷぺぽ」の入力方式だ。富士通式は「は」と「親指左」を同時に押すと「ば」になる。「ぱ」にするには、小指を伸ばした「半濁音」キーを同時に押す。「半濁音」キーを押すために手を広げなくてはいけない。
これを解消するため、NICOLAでは「ぱぴぷぺぽ」を別の文字のキーに割り当てた。例えば「ぱ」なら、「ら」と「親指左」の同時押しになる。元の「は」と異なるキーを使うので戸惑うけれど、2キーで済み、Shiftキーへ指を伸ばす必要がない。また、従来どおり「半濁音」キー(NICOLAではShiftキー)を使った入力も可能となっている。
もう1つ、親指シフトでは独立した「無変換」キーと「変換」キーがあった。NICOLAではこれを廃止して親指シフトキーに統合している。左親指シフトを単独で押すと「無変換」、右親指シフトを単独で押すと「変換」となる。
FKB7628はコンパクトタイプのキーボードであるため、テンキーはない。また、Numロックキーもなく、ノートPCの左手エリアにあるような「擬似テンキー」も使えない。しかし、親指シフトの場合、カナキーは3列に収まっており、数字キーのある1列は数字と記号専用である。だからテンキーほど便利ではないけれど、いつでも数字を打てる。JIS配列ではここにもカナが割り当てられているため、英数モードに変更するかIMEをキャンセルする必要がある。そうした手間は親指シフトには不要だ。親指シフトだからこそテンキーレスに割り切れたといえるだろう。
かなキー部分の間隔(キーピッチ)は19mmとフルキーボードサイズが確保されている。ただし、コンパクト化のしわ寄せはある程度はある。JIS配列の「Menu」は上段「F12」キーの右側に大移動、親指キーの大きさを確保したため、「Alt」「Ctrl」「Windows」キーは小さくなっている。「Insert」「Delete」も右肩に小さくまとめられた。「Delete」の位置が遠いけれど、文字入力に関しては右小指の届く範囲に「後退」「取消(削除)」があるので問題ない。
キーの端を押してもスムーズに押せる「ギアリング式」
キーの押下に関しては「軽いながらも打鍵をしっかり感じられる」という印象だ。ストロークは3mm、キー荷重は約55gとのこと。また、ホームポジションと周辺部の打鍵感が変わらないところもいい。一般のキーボードはキーを筒状の柱で支える仕組みで、キーの中央を叩けば軽く感じるけれど、キーの端を叩くと柱の軸が傾くため、ちょっと引っかかる感じがある。しかし「FKB7628-801」はキーの端を押してもなめらかだ。これは「ギアリング式」という、キーを左右の2カ所から支える機構を採用しているからだ。
この仕組みはとてもよくできていて、力の弱い小指を伸ばした先のキーをスムーズに押せた。ただし、わざわざ「キートップが外れにくい」と謳っているように、キーの分解掃除はまず不可能。筆者のようにPCを触りつつ飲み食いするような人にとっては向かないかもしれない。
キーの押しやすさといえば、親指シフトキーがちょっと高い位置にあるところもポイントだろう。親指のホームポジションを意識するためにも分かりやすいし、頻繁に発生するかなキーと同時押しの負担も軽減されているような気がした。