親指シフトは、1980年代に一世を風靡した日本語入力方式だ。ふたつの親指シフトキーを組み合わせて、すべてのかな文字を1回の打鍵で入力できる。また、すべてのかなキーが3列に収まるため指が届きやすく、タッチタイプに適している。「OASYS」でワープロの洗礼を受けた人々にとって、親指シフトキーボードは手放せないアイテムだ。しかし、JIS配列キーボード全盛の昨今、少数派の親指シフトユーザーは将来の製品供給に不安を抱えているはず。
でも大丈夫。富士通の関連会社、富士通コンポーネントは今も親指シフトキーボードを生産しており、8製品のステータスが「生産中」。また、同社が富士通PCの周辺機器として販売する「FMV-KB232」、「FMV-KB613」も健在だ。それだけではなく、新技術「ギアリング」を採用した新製品も開発投入されている。それが今回触ってみたキーボード「FKB7628-801」。発売は2010年7月だった。
Windowsパソコンのある場所へ持って行けるサイズ
試用機の主な仕様
[製品名] 親指シフトキーボード「Thumb Touch」 [型番] FKB7628 [色] 白 [キー数] 親指シフト配列87キー(Windowsキー、アプリケーションキー付) [キー仕様] 3.0mmストローク、押下圧(入力荷重)約55g、キーピッチ19.05mm [インタフェース] USB 1.1 [サイズ/重量] W318×D158×H18mm / 約360g [対応環境] Windows XP/Vista/7、日本語入力ユーティリティ「Japanist 2003」(別売) [店頭予想価格] 15,540円前後
「FKB7628-801」のコンセプトは「持ち運びが便利」な携行型とのこと。幅318mm、奥行き158mmはマルチメディアノートPCのキートップとほぼ同じ面積で、重量360gはオジサン向け週刊誌(約200g)2冊分というところか。iPhoneだのAndroidだのというご時世に、この大きさのキーボードを持ち歩けとは……と思ったけれど「携帯」ではなく「携行」であった。つまり、ビジネスバッグに入れて持ち歩けるサイズと重さということ。これをどうするかといえば、会社や友人宅、ネットカフェなど、様々な場所でPCに接続し、ユーティリティソフトを入れさせてもらえたら、その場で親指シフト入力を使える。これは親指シフトにこだわるユーザーにとってシアワセなことだと思う。
また、ノートPCを選ぶ際に、いままでは親指シフト搭載のLIFEBOOK-E780/BとFMV-S8390/Sしか選択肢がなかった。他社製ノートPCに親指シフトエミュレータ「やまぶき」をインストールする方法もあるけれど、キートップのカナ表示が親指シフトキーボードとは異なるため不便だった。しかし、今後は好きなノートPCとこのキーボードを合わせて持ち歩くという選択肢が生まれた。広いテーブルが必要になるものの、JIS配列+エミュレータよりも、親指シフト環境を格段に向上させることができる。
USBケーブルが脱着式となっているところも、ユーザーの利を考えている。キーボードを持ち運ぶとき、たいていはケーブルをキーボードにグルグル巻きにする。きちんと折りたたむ人もいるかも知れないけれど、いずれにしても、鞄から取り出すときにどこかに引っかかり、これをやりすぎると断線の原因になる。脱着式ならケーブルだけ鞄のポケットに入れられるから、故障の原因になりにくい。また、うっかりケーブルを家においてきてしまっても、キーボード側の端子はミニB端子だから、手近なデジカメ用USBケーブルで代用できる。添付のケーブルは1mだが、好みの長さのケーブルと交換できるというメリットもある。