―― サムスンは日本参入以来、ソフトバンク向けの端末を発売していました。ドコモ向けは2010年2月に発売されたWindows Mobile搭載のSC-01Bからでしたが、ドコモからスマートフォンを出すことは、かなり前からの計画だったのでしょうか?

オウ氏 弊社とドコモさんの付き合いは実は長く、かなり前から技術交流を行っています。iモードが海外進出した際、弊社はヨーロッパ向けにiモード対応機種を作っていましたし、海外のiモードでは弊社が端末シェアNo.1だったと思います。メーカーとして事業者は特別な存在ではありますが、1社にこだわっていたわけではありません。とは言え、iモード端末で参入するのは大変な労力を要します。モバイル市場の流れがスマートフォンに移っていくことは2~3年前から予測されていましたし、スマートフォンという新しいプレイグラウンドであれば、新しい付き合いができるのではないかと提案させていただきました。それが、ちょうどGALAXYという新しいフラッグシップ端末を提案できる時期と重なったわけです。

―― タブレット型のGALAXY Tabは、普及が期待されている電子書籍の閲覧に適した端末だと思いますが、タブレットや電子書籍の市場の今後の動向をどのように予測されていますか?

オウ氏 GALAXY Tabについては新しいタイプの端末ですし、まだ様子を見る段階だと考えています。アップルのiPadが発売されたときに、多くの方があっと驚いて注目を集めていましたが、iPadが発表される以前から弊社は、このサイズ(7インチ)で開発していました。弊社は携帯電話メーカーなので、徹底的にモビリティを重視していますし、このサイズが最適だと考えています。しかし、スマートフォンと同様に、タブレット端末もマーケットが大きくならないと端末価格も安くなりません。様子を見る段階がすぐに終わるのか、しばらく続くのかは何とも言えませんが、この新しいマーケットを育てようという支援軍はいっぱいいますし、今後成長していくことは間違いないでしょう。

―― 電子書籍の分野で、弊社が取り組んでおられることはありますか?

オウ氏 電子書籍マーケットは開設していませんが、コネクトポイントとして関わって、普及に寄与することは行っています。具体的には、お客様が利用しやすくするためのハブを設けています。「リーダーズハブ」というもので、世界中の多くの電子書籍や雑誌、新聞などを素早く検索してアクセスできます。電子書籍だけでなく、音楽であれば「ミュージックハブ」、ゲームだったら「ゲームハブ」といったものを、GALAXY Tabだけでなく、今後発売するタブレット端末にも対応させていく予定です。ハブの利用は無料ですが、コンテンツは一部有料のものもあります。

阿部氏 日本版のGALAXY Tabでは、ドコモの電子書籍サービス(2Dfacto)のほかに「マガストア」「eBooks JAPAN」も利用できますよ。

―― 海外メーカーが日本のケータイ市場で収益を上げるのは難しいと言われています。世界市場でトップシェアを誇るサムスンが、日本市場にこれほど注力する目的はどこにあるのでしょうか?

オウ氏 ビジネスですから、日本市場においても当然利益は追求しています。しかし、日本では販売台数の目標を定める段階ではなく、質で認めていただくことを目標にしています。日本のお客様は、世界でトップ水準と言えるほど、品質に対して非常に厳しい目を持っていらっしゃいます。日本のお客様の声が聴けることは、弊社のグローバル向け製品の品質向上にもつながっています。「日本で質を認めてもらえるようになれ」というのが社長からの指令なんですよ。GALAXY Sが多少は評価されたことで、実務側はほっとしていますが、社長はまだまだ満足はしていません。

阿部氏 一度始めたからには、責任を持ってお客様にいいものを提供していきたいですし、常にいいものを提供していくことが弊社としての力にもなってくると考えています。