――今やライフスタイルの中にまで取り込まれているという『×××HOLiC』ですが、最初に話を聞いたときの感想はいかがでしたか?
福山「最初はオーディションでしたね。『ツバサ・クロニクル~年代記~』がNHKでTVシリーズとしてアニメ化されていて、そこからあまり時間が経っていない状態で、劇場版で『×××HOLiC』をやりますというお話を聞いたのですが、そこで初めて『×××HOLiC』に触れ、オーディションに臨んで、四月一日役に決まったという経緯になっています」
――オーディション当時、四月一日についてはどのような印象をお持ちでしたか?
福山「最初の印象は、見た目と中身が全然違う子だなって思いました。今となっては全然違和感もないのですが、あのCLAMPさんのシャープな絵柄で、メガネをかけた感じだと、どちらかというと大人しそうなイメージじゃないですか。でも、実際はあんなにやかましい(笑)。そのギャップがすごく面白いなと思いました。今でも覚えているのですが、当時、事務所のスタッフから、『外見は全然福山さんのイメージじゃないですけど、中身が福山さんのイメージです』という連絡がありまして、それは合っているのか、合っていないのか、どっちなんだよって(笑)」
――オーディションで四月一日役に決まり、実際の収録が始まったところで、最初の印象とちがっていた部分はありましたか?
福山「実際に演じてみると、非常にしっくりとくるんですよ。先ほど、見た目と中身のギャップというお話をしましたが、それにいい意味で助けられた部分がありますね。そういった人物であるからこそ、取り繕う必要がまったくない。もちろん自分の中では、良いように聴かせたいとか、良いように演じようっていう気持ちはあるのですが、「かわいく」「カッコよく」「面白く」といった、いわゆる表層の部分を気にせずに演じることができるキャラクターなんですよ。そこに助けられたところがとても多いと思っていますし、自分としてもできるだけプレーンなものを表に出せるように心がけました」
――ということは、福山さんとしてはすごくやりやすい役だったということですか?
福山「やりやすいかどうかといえば、やりやすいですね。でも、やっていることは、とても難しいことだと思っています」
――逆に四月一日を演じるうえで、どんな苦労がありましたか?
福山「先ほども少し言いましたが、四月一日はやり方がいくらでもある人物なんですよ。どう演じても成り立つんだけど、どう演じても失敗かもしれない。そんな様相をはらんでいるシーンがとても多い。なので、皆さんが実際のオンエアで聴くのは、その中の1パターンしかない、というのが最大の苦労かもしれません」
――演じ方によって印象は大きく変わってきますからね
福山「そうなんですよね。ここのシーンだと、こういうやり方も成り立つし、またちがったやり方も成り立つはず。じゃあ、どっちがいいだろうって……。どれもが正解のようで、どれもが正解ではない。そこにすごく悩んだ記憶があります」
――四月一日に限らず、『×××HOLiC』という作品には、正解がわからないキャラクターっが多いかもしれませんね
福山「それって本当にすごいことだと思うんですよ。パブリックイメージがしっかりしているキャラクターってあるじゃないですか。きっとこのキャラクターはこうだ、ああだっていう。でも『×××HOLiC』の場合、そうではないキャラクターで構成されていて、ちゃんと原作のある作品なのに、僕たちの演じるキャラクターボイスで印象が変わってくる。こういった作品は、昨今のアニメ事情ではかなり稀なことかもしれませんね」