――大先輩である仲代さんとの共演についてはいかがでしたか。
徳永「仲代さんは『確かに年齢も経験も違うけど、私も忠男という役を初めて演じるのだから、君とスタートラインは変わらないよ』とおっしゃってくれました。その言葉のおかげで気が楽になり、全力でぶつかっていくことが出来ました。とても寛大な方で、何をしてもニコニコと見守ってくれました」
――徳永さんが演じられた春というキャラクターについては?
徳永「それが……私自身は必ずしも春に共感出来ないんですよ(笑)。春と忠男はちょっと特殊な依存関係にあるというか、あそこまで密接に寄り添えるかというと、さすがに私には自信がないですね。でも、この作品で描かれているのは春なりの愛情であり、忠男なりの愛情だと思いますし、不器用ながらも私はそこに人間らしさを強く感じます」
――もともとはモデルからキャリアをスタートされてますが、女優への憧れは昔から?
徳永「実は全然なかったです(笑)。今でもホントに不思議だと思います。人前に出ることは好きでしたけど、文化祭の劇で主役に手を挙げるくせに恥ずかしくてセリフはものすごく早口、みたいなタイプでしたから(笑)。たまたまオーディションに合格して、いろいろな事情を経てここにいますが、じっとしていられない性格なので映画もほとんど見てなかったんです。でも、芝居の楽しさを教えてくれたのは映画でしたし、映画作りはやっぱり面白いと思います」
――徳永さんが芝居をする上で心がけていることは何ですか?
徳永「何が正しくて何が正しくないか、芝居に答はないと思うんです。ただ、『春との旅』では苦しんで苦しんで追い詰められた結果、いいものが残せたので、お芝居をしている間はどんなに苦しくても、打ち上げで『楽しかった』と思えればいいかなと思えるようになりました。仲代さんはきっとそんなこと何度も何度も乗り越えてきていらっしゃるでしょうし、『現場を楽しむ』ということは何十年も先の話であって、私のような者はまだ楽しんでいる場合ではないかなと。とにかく一生懸命に、後で楽しめるよう、今は苦しみたいです(笑)」……続きを読む