問題はタブレットのエリア
秋葉原などには、すでにARMプロセッサのタブレットコンピュータが数多く売られている。タブレットは構造が簡単で、メインボードと液晶、バッテリを組み合わせて簡単に作ることができる。また、オペレーティングシステムの大半がAndroidなのは、オープンソースで誰でも移植が可能で、Androidマーケットなどを入れなければライセンスも発生しないからだ。このままの状態だと、タブレットの市場は、iOSかAndroidかという状態になる。もちろん、いくつかWindowsを使ったものもあるが、問題は、Windowsがタッチなどの操作には最適化されていないという点。たとえば、ウィンドウを閉じるクローズボタンは指で操作するには小さすぎて間違ってアイコン化してしまうことが多い。このため、タブレット用には、新たなUI、あるいはタブレット用にデザインし直したUIが必要となる。これに対してAndroidなどは最初からタッチ操作を前提にしているため、システムが小さなボタンを表示することはない。
ARM版Windowsの大きな市場の1つは、このタブレットの領域になると思われる。Microsoftとしては、現在のWindows Phone 7を強化してタブレット対応という方法も取りえたはずだが、どうもそういう判断にはならなかった。ウワサによるとWindows Phone 7の開発チームは、「タブレットには対応しない」と明言しているということだが、それがやる気がないとういことなのか、Microsoftの方針として「Windows Phone 7をタブレットに対応させない」ということなのかはよくわからない。ただ、これまでのMicrosoftの動きからみると、ある分野をどの事業部が担当するのかは、事業部の勢力争いの一部であり、結果的にタブレットはWindowsの開発チームが勝ち取ったということなのかもしれない。そして、その検討の結果が、WindowsのARM対応ということなのだろう。
昨年のCESの基調講演でバルマーは、出荷前のiPadを制するように「スレートPC」をぶち上げたが、実際には、ほとんど製品が出ていない。つまり、現状のWindowsでは、使い心地のいいタブレットを開発することは困難だったのであろう。
今回のCESでは、タブレットやマルチコアに最適化するというAndroid 3.0(Honeycomb)を採用するタブレットがいくつか発表された。ただし、会場でのデモのほとんどは、Android 2.2で行われていた。つまり、Honeycombもまだ、完成してはいないのだ。ある意味、これは、Google側が、ARM版Windowsに対抗すべく、早期にタブレットの発表を行い、先制しようとしているのだと考えられる。
会場で唯一Android 3.0をうごかしていたMotorolaのXOOM。ただし、ホームページやメニューなどにはアクセスさせてもらえず、動画再生などを見せたのみ。他社でもAndroid 3.0を採用すると発表していたところが多かったが、デモでは2.2などを搭載したハードウェアしか展示していないかった。 |
Microsoftは現在Windowsを3年周期で開発している。Windows 7は2009年の出荷なので、その3年後の2012年に次期Windowsは出荷される予定だ。となると、今年中に次期Windowsの概要などが公開されることになると考えられる。これまでの経過から春のWinHECか、秋のPDCとなるわけだが、WinHECについてはいまだに発表がなく(通常Microsoftのイベントは半年前に開催が発表される)、9月のDCあたりの可能性が高そうだ。
CESの基調講演で行ったデモでは、GUI部分は現在のWindows 7とまったく同じだった。現在、検討や開発がすすめらているのだとは思われるが、いまのところ何も決まってないという段階ではないかと推測される。となると、やはり今回の発表も、タブレット市場などに向け、「Windowsがやってきますよ」というアナウンスだと考えられる。
いまや、どのコンピュータも「モバイル」とは無関係でいられない。Windowsは、VistaでようやくノートPCに本格対応した。それまでのWindowsはデスクトップをメインターゲットとして開発されており、オマケ的にノートPCで動いていたにすぎなかった。今回ARM版Windowsが登場するということは、Windowsのメインターゲットも、デスクトップからノートやタブレットになるのかもしれない。