ARM版Windows

ARM版のWindowsは、実行するのは、ARMのプログラムコードであり、現在のWindows上のアプリケーションは、.NETやJavaなどの仮想コードを使ったもの以外、x86のネイティブコードで作られたものは動作しない。Microsoftは、Officeなどを用意するとのことだが、他のMicrosoft製品が対応するか、無償で提供している各種のソフトウェアまでARM版が用意されるのかどうかは不明である。もっとも、高級言語で作られたアプリケーションであれば、アプリケーション自体の移植は比較的容易とおもわれるので、Microsoftがその気になれば、同社と関連のソフトウェア(たとえばWindows Liveの各種プログラムなど)は、ARM対応するだろう。

サードパーティのソフトウェアの場合、いくつかの問題がある。Windowsの互換性に頼って、過去のやり方で動作しているアプリケーションで、パッケージ内に過去に配布可能だったモジュールなどを持つものは、ARM版Windowsには、次期Windows以外のバージョンがなく、モジュールなどが動作しない。また、サードパーティが他社のライブラリなどを利用している場合に、そのARM版がないと動作できない。おそらく、サードパーティのARM対応は様子見から始まり、ある程度普及してからの対応となることと思われる。また、当面ARMプロセッサの性能は、Atom並なので、より高い性能を必要とするようなアプリケーションの移植は当面行われないだろう。

現時点では、ARMには、PCのようなハードウェア標準がないため、ARM版Windowsは、OEM版としてハードウェアメーカーからのみの提供になると思われる。今回の発表では、QualcommやTI、ARMといったデバイスメーカーのみが参加表明という形であり、当初は、それぞれの開発キットで動作するARM版Windowsが提供されることになり、メーカーがこれを入手し、リファレンスデザインをベースに設定を行うことになると思われる。

また、現在のARMプロセッサの性能は、Atom程度で、Core iシリーズにはおよばない。これは性能だけでなく、たとえば、仮想化支援機能やSSE/AVXなどの高性能なSIMDインストラクションという点、最大搭載可能なメモリ量などで違いがある。ARMプロセッサもNEONと呼ばれるSIMD機構はもっている。また、2015年を目標に次世代アーキテクチャとなるCoretex A15が開発中だ。ARMプロセッサは、Coretex A9ではじめてアウトオブオーダー実行を取り入れた。これまで組み込み機器用として消費電力と実行性能のバランスを取ることがARMプロセッサの基本コンセプトであり、ようやく消費電力を大きく上げずにアウトオブオーダー機構を取り込むことが可能になったのだ。おそらく、ARM版Windowsが登場する頃には、A9もある程度普及しているはずで、現状よりも高い実行性能が得られるだろう。