文章を読むことに特化した端末
Readerは、海外では無線LANと3G回線を内蔵した「Daily Edition」も提供されている。端末からワイヤレスでReader Storeにアクセスして書籍を購入できるため、いつでもどこでも新たな読書を開始できるというのが売りだ。米国では、通信費を書籍の購入代金から回収するモデルのため、通信費がかからないというのもポイントだ。
Daily Editionは、今回日本では発表されていない。この通信費がかからないというビジネスモデルがまだ出てきていないためということで、ソニー側では、まずはReaderの早期投入を重視して、通信非対応モデルを発売したとしている。今後、携帯キャリアとの話し合いの中でビジネスモデルの構築を検討していく意向だ。
「外出先で新刊や興味のある本が出ていたのに気づいて、すぐにその場で買って読む」といった行動ができないのは、ソニー側にとっても出版社・作家側にとっても機会損失ではある。現在のところは、モバイルPCで購入してその場で転送する、といった使い方をすれば、外出先でも本の購入ができないことはない。すぐに読みたいという場合は、そうした利用法をするしかないだろう。
この意味では、書籍配信のReader Storeの役割も重要になってくる。当初は2万冊のラインナップとなる予定で、随時拡充していく考えだ。Readerを購入する人とストアの方向性が合致すれば単純なラインナップ数は問題ではないとはいえ、幅広い要望に応えるには拡充は急務だろう。Reader Storeで提供するというレコメンド機能は、うまく機能すれば新しい書籍との出会いが演出できるので、紙の書店にはない新たな魅力となるかもしれない。
「自炊本」も読めるので
現時点で欲しい本がない場合、紙の本と電子書籍を同時配信する書籍や、自分で書籍をデジタル化するいわゆる「自炊」、書籍を郵送すると裁断・デジタルデータ化してくれるサービスを利用するといった方法もあるので、こうした仕組みを利用するのもいいだろう。自炊をした場合もPDFであれば書籍として認識されるので、自分で買った書籍をデジタル化してReaderで読むことは可能だ。JPEG画像の表示にも対応しているが、JPEGは写真として認識されて、書籍のように1つの本としては扱われず、アプリケーションタブの写真機能で閲覧するしかないようだ。
端末としては、画面は見やすく、長時間読んでも目も疲れず、読書に集中できる製品に仕上がっている。単機能ではあるが、軽く持ち運びは容易なので、ほかの荷物があるときでもちょっと持ち出そうという気にさせるという意味で、読書好きには便利だろう。
半面、モノクロ画面で反応速度に劣る電子ペーパーは、動きのある電子雑誌やカラー原稿の表示には不向きで、文章を読むことに特化したデバイスであることは間違いない。
あとはReader Storeが今後どれだけ充実するかというのが成功の鍵を握るだろう。現在はXMDFのみの販売だが、ソニーでは今後ドットブックや縦書き対応のEPUBへの対応も検討しているということで、現行のReader自体が対応できるかどうかは不明なものの、コンテンツが充実していくことは期待できそうだ。できれば、他フォーマットへの対応をソフトウェアアップデートで実現してくれれば言うことはないのだが。