「1980年代のすばらしかったブルーマウンテン」の復活
そんな川島さんが今年9月、世に送り出した豆がある。ブルーマウンテンだ。ブルーマウンテンといえば、UCC入社後の初めての赴任先、ジャマイカで栽培にたずさわった豆である。「どうして再びブルマンを? 」と聞くと、「当時のブルマン総生産量は年間130tほど。しかし今では1,300tに膨れ上がっており、つまりはとても"ブルマン"とは名乗れないような質の悪い豆も混ざっている状態です」。また、最近のカフェオーナーの中には「ブルマンはおいしくないという人もいます。それは玉石混交な今のブルマンであって、1980年代は本当においしかった。そのすばらしい味を伝えたいと思うようになりました」。
そんなときに出会ったのがジャマイカでジュニパー・ピーク農園を経営するシャープ兄弟。ブルーマウンテンの現状を憂い、「最高のブルマンをつくりたい」という同兄弟と協力し、「グラン クリュ ブルーマウンテン」を発売した。生産量が非常に少ないので、単品販売はしていない。購入には、生豆を10kg購入して必要に応じて焙煎依頼し、発送してもらうという「コーヒーセラーオーナーズ」制度を利用することとなる。購入した生豆は、18℃の一定温度が保たれているコーヒーセラー内で保管され、品質劣化の心配はない。生豆10kg、コーヒーセラーでの1年間の保管料(フルボトル40本またはハーフボトル80本分)、焙煎20回分、国内送料、オリジナルメジャーカップがセットとなり、料金は33万6,000円だ。
コーヒーの"縦飲み"が可能に
「このコーヒーセラーで生豆を保管すると、3年経っても劣化しない」と川島さん。これにより、何が可能になるかというと、ワイン好きなら知っているであろう「縦飲み」なのだ。縦飲みとは、同じ銘柄のものをヴィンテージ違いで飲むということ。コーヒーも農作物なので、気候に豆の出来が左右される。こういった違いが単品で飲んでいると分かりにくいが、同時に飲み比べることでわかるようになる。ワインはセラーが普及しているため、以前からこのような飲み方がよく行われてきた。
ミ・カフェートは設立から3年。グラン クリュ シリーズでは、コロンビアやグアテマラなど、7農園の豆を扱っている。志の高い生産者と川島さんの努力の結晶となるこのコーヒーは、徐々に購入者を増やし、さらに昨年9月にはJAL国内線のファーストクラスで、今年4月には帝国ホテル東京において期間限定で提供され、その味が認められている。川島さんの「コーヒーをワインのように……」という願いに向け、一歩一歩着実に歩みを進めているように感じる。
川島さんがコンセプトディレクターを務めるイベントが開催されます。
カフェとバールビジネスのための企画展「カフェ & バール スタイル」
開催日: 11月24日~26日
時間: 10時~18時(最終日のみ~17時)
場所: 東京ビッグサイト東ホール
24日には川島さん、多くのカフェレストランを展開するカフェ・カンパニー代表楠本修二郎さんらが参加するトークセッションが、25日には日本バリスタ協会によるバリスタ競技会も開催される。期間中は同協会プロデュースのカフェも出店する。
(撮影: 中村浩二)